[最終更新日]2025/01/19
現代の企業経営において、利益追求のみならず、社会課題への貢献が重要な要素となっています。
その中で注目を集めているのが「CSV経営」です。
CSVとは「Creating Shared Value(共有価値の創造)」の略で、企業活動を通じて社会的な課題を解決することで、社会と企業双方に価値を生み出すという考え方です。
ここでは、CSV経営・マーケティングの基本概念から実践方法、先進事例までを網羅的に解説し、企業が持続的な成長を遂げるための戦略を明らかにします。
CSV経営は単なる社会貢献活動ではなく、企業の競争力強化と持続的な成長に不可欠な戦略なのです。
このページを通してCSV経営への理解を深め、自社への導入を検討するきっかけとなれば幸いです。
Contents
- 1 第1章 CSV経営・マーケティングでとは?簡単にわかり易く説明!
- 2 第2章 CSVマーケティングとCSRの違い
- 3 第3章 CSVマーケティングとSDGsの関係
- 4 第4章 CSVマーケティングの実践方法(1)製品と市場を見直す
- 5 第5章 CSVマーケティングの実践方法(2)バリューチェーンの生産性を再定義する
- 6 第6章 CSVマーケティングの実践方法(3)地域を支援する産業クラスターをつくる
- 7 第7章 CSV経営・マーケティングでに必要な組織文化とリーダーシップ
- 8 第8章 CSV経営・マーケティングでにおけるステークホルダーとのコミュニケーション
- 9 第9章 CSVマーケティングの評価と改善/持続的な価値創造のために
- 10 第10章 CSV経営・CSVマーケティングの先進事例/成功企業の戦略から学ぶ
- 11 CSV関連書籍一覧
- 12 CSVマーケティング関連サイト一覧
- 13 CSV経営・マーケティングで差別化を図る/社会的価値と経済的価値の創造に向けた戦略のまとめ
第1章 CSV経営・マーケティングでとは?簡単にわかり易く説明!
CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)経営・マーケティングは、企業が事業活動を通じて社会的な課題解決と経済的な利益創出を同時に目指す、革新的な経営戦略です。
従来のCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とは根本的に異なり、CSVは社会貢献を事業活動の中核に組み込みます。
つまり、社会課題の解決がそのまま事業機会となり、企業と社会双方に持続的な価値をもたらすのです。
従来のCSRは、企業が利益を追求する傍ら、環境保護や地域貢献といった社会貢献活動を行うという考え方が主流でした。
これは、利益追求と社会貢献を別々の活動として捉える傾向があり、社会貢献はあくまで企業の付加的な活動、あるいはコストとして認識される場合もありました。
しかし、CSVは社会課題を「事業機会」と捉え、その解決を通じて企業自身の競争力強化や新たな市場創造につなげることを目指します。
例えば、あるコーヒー会社が、フェアトレードを通じて発展途上国の小規模農家からコーヒー豆を直接購入するケースを考えてみましょう。
従来のCSRであれば、寄付金などの形で農家を支援することが考えられますが、CSVでは、高品質なコーヒー豆を適正な価格で継続的に購入することで、農家の生活水準向上に貢献します。
同時に、高品質な豆を安定的に確保することで、自社の製品の品質向上とブランドイメージの向上にもつながります。
これはまさに、社会課題(農家の貧困)の解決と企業の利益(高品質な原料の確保、ブランドイメージ向上)を両立するCSVの典型的な事例と言えるでしょう。
さらに具体例を挙げます。あるアパレル企業が、オーガニックコットンを使用した衣料品を開発・販売するとします。
これは、従来のCSRであれば、環境保護活動の一環として、植林活動などに参加することが考えられます。
しかし、CSVでは、オーガニックコットンを使用することで、農薬や化学肥料の使用による環境負荷を低減し、土壌汚染や水質汚染といった環境課題の解決に貢献します。
同時に、環境意識の高い消費者層からの支持を獲得し、新たな市場を開拓することができます。
また、オーガニックコットンの生産者との長期的なパートナーシップを構築することで、安定的な原料供給ルートを確保し、サプライチェーン全体のリスクを軽減することも可能です。
CSV経営・マーケティングは、単なる慈善活動やイメージ戦略ではありません。
社会課題の解決を事業戦略の中核に据え、持続的な成長と社会の発展に貢献する、企業にとって不可欠な戦略なのです。
社会のニーズと企業の強みを結びつけることで、新たな価値を創造し、持続可能な社会の実現に貢献していく。
これこそが、これからの企業に求められる姿であり、CSV経営・マーケティングが目指すところです。
CSV経営は、企業が社会の一員としての責任を果たすだけでなく、長期的な視点での企業価値向上、競争力強化、そして持続的な成長に不可欠な要素です。
社会と企業が共有する価値を創造することで、より良い社会の実現に貢献していく。それがCSV経営の本質と言えるでしょう。
第2章 CSVマーケティングとCSRの違い
CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)マーケティングとCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)は、どちらも企業が社会貢献に取り組む活動である点は共通していますが、その目的、アプローチ、そして企業活動における位置づけにおいて根本的な違いがあります。
この章では、両者の違いを明確にし、CSVマーケティングが現代の企業経営においていかに重要であるかを解説します。
CSR:企業の責任を果たす「守り」の活動
CSRは、企業が法律や倫理規範を遵守し、社会に対して責任を果たすという考え方です。
企業活動が社会に与える影響を認識し、環境保護活動、地域貢献活動、倫理的な事業運営などを通じて、社会の一員としての責任を果たすことを目的としています。
CSR活動は、利益追求とは別の次元で行われることが多く、企業のイメージ向上やリスク管理といった側面が重視されます。
例えば、地域清掃活動への参加、災害地への義援金寄付、環境保護のための植林活動などは、典型的なCSR活動と言えるでしょう。
これらの活動は、社会貢献という点では重要ですが、必ずしも企業の事業活動と直接的な結びつきがあるわけではありません。
CSRは、企業が「Doing Good(良いことをする)」という姿勢を示す活動であり、社会からの信頼を得るための重要な要素です。
しかし、社会貢献活動は、企業の財務諸表上ではコストとして認識されることが多く、短期的な利益に直接貢献するものではありません。
CSVマーケティング:社会課題解決と事業成長の融合
一方、CSVマーケティングは、社会課題の解決を事業機会と捉え、事業活動を通じて社会と企業双方に価値を創造することを目的としています。
つまり、社会貢献を事業戦略の中核に組み込み、社会課題の解決と企業の利益追求を両立させるのです。
CSVは「Doing Well by Doing Good(良いことをすることで業績を上げる)」という考え方を体現しており、社会貢献を持続的な事業成長の原動力と捉えます。
例えば、ある食品会社が、健康志向の高まりに着目し、栄養価が高く健康に良い食品を開発・販売するケースを考えてみましょう。
これは、人々の健康増進という社会課題の解決に貢献しながら、健康志向の消費者層という新たな市場を開拓し、企業の利益成長にもつながります。
また、ある自動車会社が、環境負荷の低いハイブリッド車や電気自動車を開発・販売することは、地球温暖化という社会課題の解決に貢献しながら、環境意識の高い消費者からの支持を獲得し、企業の競争力強化につながります。
CSVマーケティングは、社会課題の解決と企業の利益追求を一体化させることで、長期的な視点での企業価値向上を目指します。
社会のニーズと企業の強みを結びつけることで、新たな市場を創造し、持続可能な社会の実現に貢献していく。
これこそが、CSVマーケティングが目指すところです。
CSRとCSVの違いを表で比較
項目 | CSR(企業の社会的責任) | CSV(共有価値の創造) |
---|---|---|
目的 | 社会に対する責任を果たす | 社会課題の解決と企業利益の同時追求 |
アプローチ | 利益追求とは別の次元で行われることが多い | 事業活動の中核に社会貢献を組み込む |
活動内容 | 環境保護、寄付、地域貢献など | 社会課題解決に貢献する製品・サービスの開発・提供、事業活動の変革 |
企業活動における位置づけ | 付加的な活動、コストとして認識される場合もある | 事業戦略の中核、投資として認識される |
焦点 | 企業の活動が社会に与える影響の最小化 | 社会ニーズと事業機会の融合による新たな価値創造 |
視点 | 短期的な視点、企業のイメージ向上、リスク管理 | 長期的な視点、持続的な成長、競争力強化 |
キーワード | Doing Good(良いことをする) | Doing Well by Doing Good(良いことをすることで業績を上げる) |
CSVマーケティングの重要性
現代社会において、企業は利益追求だけでなく、社会課題の解決に貢献することが求められています。
消費者の意識も変化しており、社会貢献に取り組む企業を支持する傾向が強まっています。
CSVマーケティングは、このような社会の変化に対応し、企業の持続的な成長を支えるための重要な戦略と言えるでしょう。
CSVマーケティングを実践することで、企業は社会からの信頼を獲得し、優秀な人材を引き付け、新たな市場を開拓することができます。
また、社会課題の解決に貢献することで、企業自身のレジリエンス(回復力)を高め、長期的な視点での企業価値向上につなげることができます。
第3章 CSVマーケティングとSDGsの関係
CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)マーケティングとSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、現代の企業経営において切っても切り離せない、非常に密接な関係にあります。
SDGsは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットから構成される、世界共通の目標です。貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、気候変動、持続可能な消費と生産など、人類が直面する広範な課題に取り組むことを目指しています。
SDGs:世界共通の目標とCSVマーケティングの方向性
SDGsは、企業がCSVマーケティングを実践する上での羅針盤、つまり方向性を示す重要なフレームワークとして機能します。
SDGsが示す具体的な目標とターゲットは、企業が取り組むべき社会課題を明確にし、CSV活動の方向性を示してくれるのです。
企業は、自社の事業活動と関連性の高いSDGsの目標を選び、その達成に貢献するような製品やサービスを開発・提供することで、社会課題の解決と自社の成長を同時に実現できます。
例えば、食品会社であれば、「飢餓をゼロに」「つくる責任 つかう責任」といった目標に関連する取り組みを行うことができます。具体的には、食品ロス削減のための取り組み、持続可能な農業を支援する取り組み、栄養価の高い食品の開発などが考えられます。
また、エネルギー会社であれば、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「気候変動に具体的な対策を」といった目標に関連する取り組みを行うことができます。
再生可能エネルギーの普及、省エネルギー技術の開発などがその例です。
CSVマーケティングによるSDGs達成への貢献
CSVマーケティングは、企業の事業活動を通じてSDGsの達成に貢献する、非常に効果的な手段となります。
企業は、SDGsを意識した事業戦略を策定することで、社会課題の解決に貢献するだけでなく、新たな市場の開拓、ブランドイメージの向上、従業員のモチベーション向上など、様々なメリットを享受できます。
SDGsは、単なる社会貢献活動の指針ではなく、企業が持続的に成長するための重要なビジネスチャンスと捉えるべきです。
SDGsに積極的に取り組む企業は、投資家や消費者からの評価も高まり、長期的な企業価値の向上につながります。
SDGsをCSVに取り込むメリット
- 明確な目標設定: SDGsの具体的な目標とターゲットは、CSV活動の方向性を明確にし、目標設定を容易にします。
- 共通言語の提供: SDGsは世界共通の目標であるため、企業はグローバルな視点でCSV活動を展開しやすくなります。また、ステークホルダーとのコミュニケーションも円滑に進みます。
- 社会からの信頼獲得: SDGsに積極的に取り組む企業は、社会からの信頼を獲得し、ブランドイメージの向上につながります。
- 新たな市場の開拓: SDGsに関連する製品やサービスは、新たな市場ニーズに応える可能性を秘めており、企業にとってビジネスチャンスとなります。
- 投資家からの評価向上: ESG投資(環境・社会・ガバナンス投資)の拡大により、SDGsに取り組む企業は投資家からの評価が高まる傾向にあります。
具体例:CSVとSDGsの連携
- ユニリーバ: 「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」は、健康と衛生、環境負荷の軽減、生活水準の向上という3つの主要分野で具体的な目標を設定し、SDGs達成に貢献する取り組みを進めています。
- ネスレ: 農村部の開発支援や栄養改善プログラムなどを通じて、「飢餓をゼロに」「質の高い教育をみんなに」といった目標達成に貢献しています。
- 富士フイルム: 環境負荷低減技術の開発や再生可能エネルギーの活用などを通じて、「気候変動に具体的な対策を」「つくる責任 つかう責任」といった目標達成に貢献しています。
CSVマーケティングとSDGsの相乗効果
CSVマーケティングとSDGsは、相互に補完し合う関係にあります。
CSVは、SDGs達成のための具体的な手段を提供し、SDGsは、CSV活動の方向性を示す羅針盤となります。
企業は、この両者を効果的に連携させることで、持続可能な社会の実現に大きく貢献することができます。
そして、その貢献は、企業自身の持続的な成長にもつながるという、まさに「共有価値の創造」が実現されるのです。
第4章 CSVマーケティングの実践方法(1)製品と市場を見直す
CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)マーケティングを実践する上で、最初に、そして最も重要なステップの一つが、自社の既存の製品やサービス、そしてそれらが提供されている市場を徹底的に見直すことです。
この見直しは、単に既存製品の改良や市場の変化を追うだけでなく、社会が抱える課題を起点に、自社の事業活動がどのように貢献できるのかという視点で行われるべきです。
社会課題を解決する製品やサービスを提供することは、企業にとって単なる社会貢献活動ではなく、新たな市場の開拓、既存市場における競争優位性の確立、そして長期的な企業価値の向上に繋がる重要な戦略となります。
社会課題と市場ニーズの交差点を探る
製品と市場を見直す際には、「社会課題」と「市場ニーズ」の交差点を探ることが重要です。
現代社会は、環境問題、健康問題、貧困問題、教育格差など、様々な課題に直面しています。これらの課題は、同時に新たな市場ニーズを生み出す源泉ともなり得ます。
企業は、これらの課題を的確に捉え、自社の強みや技術を活かして解決策となる製品やサービスを提供することで、社会貢献と事業成長を同時に実現できるのです。
例えば、近年高まっている健康志向は、「健康寿命の延伸」「生活習慣病の予防」「免疫力向上」といった社会課題と密接に関連しています。
この課題に対して、食品企業は栄養バランスに優れた食品や機能性食品を開発したり、運動不足解消のためのフィットネスサービスを提供したりすることで、市場ニーズに応えながら社会課題の解決に貢献できます。
また、地球温暖化や資源枯渇といった環境問題は、「再生可能エネルギーの普及」「省エネルギー化」「資源のリサイクル」といった市場ニーズを生み出しています。
この課題に対して、自動車メーカーは電気自動車や燃料電池車を開発したり、エネルギー企業は再生可能エネルギーを活用した電力供給サービスを提供したりすることで、市場ニーズに応えながら環境負荷の低減に貢献できます。
自社の強みを社会課題解決に活かす
製品と市場を見直す際には、自社の強みや技術を最大限に活かすことが重要です。
社会課題の解決に貢献する製品やサービスは、単に社会的に意義があるだけでなく、市場において競争力を持つものでなければなりません。
そのためには、自社の技術力、開発力、マーケティング力などを分析し、どの分野で社会課題解決に貢献できるのかを見極める必要があります。
例えば、あるIT企業が、高齢者のデジタルデバイド解消のためのプログラミング教室を運営するとします。
これは、高齢者の社会参加促進という社会課題の解決に貢献する活動ですが、IT企業が持つ教育ノウハウやオンラインプラットフォーム運営の経験を活かすことで、効果的かつ効率的に事業を展開できます。
また、ある製造業企業が、廃棄物削減のためのリサイクル技術を開発するとします。
これは、資源の有効活用という社会課題の解決に貢献する活動ですが、製造業企業が持つ素材に関する知識や加工技術を活かすことで、革新的なリサイクル技術を開発できます。
具体的な見直しのステップ
製品と市場を見直す際には、以下のステップで進めることが効果的です。
- 社会課題の特定: 自社の事業領域に関連する社会課題を特定します。SDGs(持続可能な開発目標)などを参考に、具体的な課題をリストアップします。
- 市場ニーズの分析: 特定した社会課題に関連する市場ニーズを分析します。消費者の動向、競合企業の動向、技術動向などを調査します。
- 自社の強みの分析: 自社の技術、人材、ブランド、ネットワークなどの強みを分析します。SWOT分析などのフレームワークを活用すると効果的です。
- CSV機会の発見: 社会課題、市場ニーズ、自社の強みを照らし合わせ、CSV機会を発見します。どのような製品やサービスを提供することで、社会課題の解決と事業成長を両立できるのかを検討します。
- 製品・サービスの開発・改良: 発見したCSV機会に基づいて、新たな製品やサービスを開発したり、既存の製品やサービスを改良したりします。
- 市場への展開: 開発・改良した製品やサービスを市場に展開します。ターゲット顧客に合わせたマーケティング戦略を立案・実行します。
長期的な視点での取り組み
CSVマーケティングは、短期的な利益を追求するものではなく、長期的な視点で取り組むべきものです。
社会課題の解決には時間がかかる場合もありますし、市場の反応もすぐに現れるとは限りません。
しかし、長期的な視点で継続的に取り組むことで、社会からの信頼を獲得し、持続的な事業成長を実現することができます。
第5章 CSVマーケティングの実践方法(2)バリューチェーンの生産性を再定義する
CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)マーケティングにおいて、バリューチェーンの再定義は、社会的な課題解決と企業の競争力強化を同時に実現するための重要な鍵となります。
バリューチェーンとは、企業が原材料の調達から製造、物流、販売、そしてアフターサービスに至るまで、製品やサービスを顧客に届けるまでの一連の活動を指します。
この章では、バリューチェーン全体にCSVの視点を導入し、生産性を再定義することで、いかに社会価値と経済価値を同時に創造できるのかを詳しく解説します。
バリューチェーンにおけるCSVの視点:各段階での取り組み
バリューチェーンは、一般的に以下の主要な活動に分類されます。
それぞれの段階でCSVの視点を取り入れることで、社会課題の解決と企業の利益に貢献することができます。
原材料の調達
- フェアトレード: 発展途上国の生産者から適正な価格で原材料を調達することで、彼らの生活水準向上に貢献します。また、長期的な取引関係を構築することで、安定的な原材料供給を確保し、サプライチェーンの安定性にもつながります。
- 持続可能な調達: 環境負荷の低い方法で生産された原材料を優先的に使用することで、森林破壊や水質汚染といった環境課題の解決に貢献します。例えば、森林認証を受けた木材の使用や、持続可能な漁業で獲れた水産物の使用などが挙げられます。
- 地産地消: 地域で生産された原材料を積極的に使用することで、地域経済の活性化に貢献します。また、輸送距離の短縮によるCO2排出量削減にもつながります。
製造
- 省エネルギー化: 製造工程におけるエネルギー使用量を削減することで、CO2排出量削減とコスト削減を同時に実現します。例えば、高効率な設備の導入や、再生可能エネルギーの活用などが挙げられます。
- 廃棄物削減: 製造工程で発生する廃棄物を削減することで、環境負荷を低減し、資源の有効活用につながります。例えば、リサイクル可能な素材の使用や、廃棄物の分別・回収システムの構築などが挙げられます。
- 労働環境の改善: 従業員の労働環境を改善することで、労働災害の防止や生産性向上につながります。例えば、安全な作業環境の整備や、適切な労働時間の設定などが挙げられます。
物流
- 輸送効率の向上: 輸送ルートの最適化や、積載効率の向上などにより、輸送にかかるエネルギー消費量を削減します。例えば、モーダルシフト(トラック輸送から鉄道や船舶輸送への転換)や、共同配送などが挙げられます。
- 環境負荷の低い輸送手段の活用: 電気自動車やハイブリッド車など、環境負荷の低い輸送手段を積極的に活用することで、CO2排出量削減に貢献します。
販売・マーケティング
- 倫理的なマーケティング: 消費者に対して正確な情報を提供し、誤解を招くような広告や宣伝活動を行わないことで、消費者からの信頼を獲得します。
- 持続可能な消費の促進: 環境に配慮した製品やサービスを積極的に販売することで、消費者の環境意識を高め、持続可能な消費行動を促進します。
アフターサービス
- 製品の長寿命化: 修理やメンテナンスサービスを充実させることで、製品の寿命を延ばし、廃棄物の削減に貢献します。
- リサイクルシステムの構築: 使用済み製品の回収・リサイクルシステムを構築することで、資源の有効活用と環境負荷の低減に貢献します。
バリューチェーン再定義の事例
- パタゴニア: 環境に配慮した素材の使用、リサイクルプログラムの実施、フェアトレード認証製品の販売など、バリューチェーン全体で持続可能性を追求しています。
- ユニリーバ: 持続可能な調達、環境負荷の低い製造工程、衛生習慣の改善を目的とした製品開発など、バリューチェーン全体で社会課題の解決に取り組んでいます。
バリューチェーン再定義のメリット
- 社会課題の解決への貢献: 環境問題、貧困、労働問題など、様々な社会課題の解決に貢献することができます。
- 企業の競争力強化: コスト削減、ブランドイメージ向上、新たな市場開拓などにより、企業の競争力強化につながります。
- ステークホルダーとの良好な関係構築: 消費者、従業員、取引先、地域社会など、様々なステークホルダーとの良好な関係構築に貢献します。
- 長期的な企業価値の向上: 持続可能な成長を実現することで、長期的な企業価値の向上につながります。
まとめ
バリューチェーンの再定義は、CSVマーケティングの中核となる要素であり、社会課題解決と企業利益の両立を実現するための重要な手段です。
企業は、バリューチェーン全体にCSVの視点を導入し、各段階で具体的な取り組みを行うことで、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、自社の競争力強化と長期的な成長につなげることができます。
第6章 CSVマーケティングの実践方法(3)地域を支援する産業クラスターをつくる
CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)マーケティングにおいて、地域社会との連携は極めて重要な要素です。
企業が単独で社会課題に取り組むだけでなく、地域企業、行政機関、NPO(非営利組織)、地域住民など、多様な主体と連携し、産業クラスターを形成することで、より大きな社会的価値と経済的価値を同時に創造することが可能になります。
本章では、地域を支援する産業クラスター形成の重要性、具体的な方法、成功事例、そして企業が得られるメリットについて詳しく解説します。
産業クラスターとは何か?
産業クラスターとは、特定の地域に地理的に集中し、相互に関連する企業、サプライヤー、関連産業、研究機関、教育機関などが集積した状態を指します。
これらの組織は、知識、技術、人材、情報などを共有し、互いに連携・協力することで、イノベーションの創出や競争力の強化を図ります。
CSVマーケティングにおける産業クラスターは、経済的な発展だけでなく、地域社会の課題解決にも貢献するという点が特徴です。
地域支援型産業クラスターの構築方法
地域を支援する産業クラスターを構築するためには、以下のステップが重要です。
- 地域の課題の特定: まずは、地域社会が抱える課題を明確に把握することが重要です。例えば、高齢化、過疎化、失業率の高さ、環境汚染、地域特産品の衰退などが挙げられます。
- 関係者の巻き込み: 地域企業、行政機関、NPO、地域住民など、課題解決に関わる多様なステークホルダーを巻き込み、連携体制を構築します。
- 共通の目標設定: 関係者間で共通の目標を設定し、それぞれの役割分担を明確にします。例えば、「地域特産品を活用した新商品の開発による地域経済の活性化」「再生可能エネルギー導入による地域環境の改善」などが目標となります。
- 資源の共有と活用: 地域に存在する資源(人材、技術、資金、情報など)を共有し、有効活用するための仕組みを構築します。例えば、共同研究開発、人材育成プログラムの共同実施、地域資源を活用した新事業創出などが考えられます。
- 情報共有とコミュニケーション: 関係者間の情報共有と円滑なコミュニケーションを促進するためのプラットフォームを構築します。定期的な会議の開催、情報共有システムの導入などが有効です。
地域支援型産業クラスターの具体例
- 地域特産品を活用した地域活性化: 地域で生産される農産物や伝統工芸品などを活用し、新たな商品やサービスを開発することで、地域経済の活性化に貢献する取り組みです。例えば、地域で採れた果物を使ったジャムやジュースの開発、伝統工芸の技術を応用した新しい雑貨の開発などが考えられます。
- 再生可能エネルギー導入による地域環境改善: 地域に豊富な自然エネルギー(太陽光、風力、地熱など)を活用した発電事業を推進することで、地域のエネルギー自給率向上と環境負荷低減に貢献する取り組みです。
- 地域人材育成による雇用創出: 地域住民を対象とした職業訓練プログラムや起業家育成プログラムなどを実施することで、地域における雇用創出と人材育成に貢献する取り組みです。
企業が得られるメリット
地域を支援する産業クラスターを形成することで、企業は以下のようなメリットを得られます。
- 地域社会からの信頼獲得: 地域社会の課題解決に貢献することで、地域住民からの信頼と支持を得ることができます。
- 新たな事業機会の創出: 地域資源や地域ニーズを活用した新たな事業機会を創出することができます。
- 優秀な人材の確保: 地域に根ざした活動を通じて、地域に貢献したいという意欲を持つ優秀な人材を確保することができます。
- サプライチェーンの強化: 地域企業との連携を強化することで、安定的な原材料調達や物流体制の構築が可能になります。
- イノベーションの促進: 多様な主体との連携を通じて、新たな知識や技術を獲得し、イノベーションを促進することができます。
まとめ
地域を支援する産業クラスターの形成は、CSVマーケティングにおいて重要な戦略の一つです。
企業は、地域社会との連携を強化し、共通の目標に向かって協力することで、社会課題の解決と自社の持続的な成長を同時に実現することができます。
地域社会と企業のWin-Winの関係を構築し、持続可能な社会の実現に貢献していくことが、これからの企業に求められる姿と言えるでしょう。
第7章 CSV経営・マーケティングでに必要な組織文化とリーダーシップ
CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)経営・マーケティングを成功に導くためには、単に戦略や施策を導入するだけでは不十分です。
組織全体でCSVの理念を共有し、日々の業務の中で実践していくための強固な組織文化と、それを牽引する強力なリーダーシップが不可欠となります。
本章では、CSV経営・マーケティングを推進するために必要な組織文化とリーダーシップについて、詳細に解説します。
CSVを根付かせる組織文化の醸成
CSV経営・マーケティングを組織に浸透させるためには、以下の要素が重要となります。
- 明確なビジョンの共有: 経営トップがCSVの重要性を深く認識し、組織全体に分かりやすく明確なビジョンを示すことが不可欠です。ビジョンは、CSVがなぜ重要なのか、どのような価値を創造するのか、組織の将来にどのように貢献するのかを明確に伝えるものでなければなりません。単なるスローガンではなく、具体的な行動指針を示すことが求められます。
- 従業員への徹底的な教育と研修: 従業員一人ひとりがCSVの理念を正しく理解し、日々の業務の中で実践できるように、継続的な教育と研修を行うことが重要です。研修では、CSVの基本的な概念だけでなく、具体的な事例や実践方法、自社の事業とCSVの関連性などを学ぶ機会を提供する必要があります。
- 双方向のコミュニケーションの促進: 経営層と従業員の間で、CSVに関する活発なコミュニケーションが行われる環境を整備することが重要です。従業員からの意見や提案を積極的に受け入れる仕組みを構築し、CSVに関する議論や情報共有を促進することで、組織全体の意識を高めることができます。
- 評価制度への組み込み: CSVの取り組みを評価制度に組み込むことで、従業員のモチベーションを高め、CSVの実践を促進することができます。単に業績だけでなく、CSVへの貢献度も評価対象とすることで、従業員の意識改革を促し、組織文化として定着させていくことが重要です。
- 成功事例の共有と表彰: 組織内外のCSVの成功事例を積極的に共有し、従業員の模範となるような取り組みを表彰することで、CSVの推進を加速することができます。成功事例は、具体的な行動指針やヒントを提供し、他の従業員のモチベーション向上にもつながります。
CSVを牽引するリーダーシップの役割
CSV経営・マーケティングを成功させるためには、リーダーシップも重要な役割を果たします。リーダーは、以下の点を意識する必要があります。
- 率先垂範: リーダー自身がCSVの理念を深く理解し、率先垂範して行動することで、従業員の模範となることが重要です。リーダーの行動は、組織文化に大きな影響を与えるため、CSVを推進する上での重要な要素となります。
- 変革を恐れない姿勢: CSVは、従来のビジネスモデルや考え方を変革することを求める場合があります。リーダーは、変化を恐れず、積極的に新しいことに挑戦する姿勢を示すことで、組織全体の変革を促進する必要があります。
- 多様なステークホルダーとの協働: CSVは、企業だけでなく、地域社会、NPO、政府など、多様なステークホルダーとの協働を必要とします。リーダーは、これらのステークホルダーとの良好な関係を構築し、協働を推進することで、より大きな社会的価値を創造することができます。
- 長期的な視点: CSVは、短期的な利益を追求するのではなく、長期的な視点で社会と企業の持続的な成長を目指すものです。リーダーは、短期的な成果にとらわれず、長期的な視点を持ってCSVを推進していくことが重要です。
- 従業員のエンパワーメント: 従業員一人ひとりがCSVの推進に貢献できるように、権限委譲や育成を通じてエンパワーメントしていくことが重要です。従業員が自らの意思でCSVに取り組むことで、より創造的で効果的な取り組みが生まれる可能性があります。
組織文化とリーダーシップの相乗効果
強固な組織文化と強力なリーダーシップが両輪となって機能することで、CSV経営・マーケティングは最大限の効果を発揮します。
リーダーが明確なビジョンを示し、組織全体でCSVの理念が共有され、従業員一人ひとりが主体的にCSVに取り組むことで、持続的な成長と社会課題の解決を同時に実現することが可能となります。
CSV経営・マーケティングは、単なる流行や一時的な取り組みではありません。
これからの企業経営において不可欠な要素であり、組織文化とリーダーシップはその成功を左右する重要な鍵となります。
第8章 CSV経営・マーケティングでにおけるステークホルダーとのコミュニケーション
CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)経営・マーケティングを成功させるためには、ステークホルダーとの良好なコミュニケーションが不可欠です。
ステークホルダーとは、企業活動に関わる全ての人々、すなわち顧客、従業員、取引先(サプライヤー、流通業者など)、地域社会、投資家(株主、債権者など)、行政機関、NPO・NGO、メディアなどを指します。
これらのステークホルダーと積極的にコミュニケーションを図り、信頼関係を構築することが、CSV経営・マーケティングの基盤となります。
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なぜステークホルダーとのコミュニケーションが重要なのか?
CSVは、企業が単独で推進するものではなく、ステークホルダーとの協働によって価値を創造していくプロセスです。
ステークホルダーのニーズや期待を理解し、彼らとの対話を通じてCSVの取り組みを推進することで、より大きな社会的価値と経済的価値を生み出すことができます。
具体的な理由としては、以下の点が挙げられます。
- 信頼の構築: 企業がCSVに取り組む姿勢や成果をステークホルダーに適切に伝えることで、企業への信頼を高めることができます。信頼は、長期的なビジネス関係の構築やブランドイメージの向上に不可欠です。
- ニーズの把握: ステークホルダーとの対話を通じて、社会課題や彼らのニーズをより深く理解することができます。これは、CSVの取り組みを効果的に推進するための重要な情報となります。
- 共創の促進: ステークホルダーとの協働を通じて、新たなアイデアやイノベーションを生み出すことができます。彼らの知恵や経験を活用することで、より効果的なCSVの取り組みを推進することが可能になります。
- 説明責任の遂行: 企業は、社会の一員として、自らの活動が社会に与える影響について説明責任を負っています。ステークホルダーへの情報開示は、この責任を果たすための重要な手段となります。
- レピュテーションリスクの軽減: ステークホルダーとのコミュニケーション不足は、誤解や不信感を生み、企業のレピュテーションリスクを高める可能性があります。適切なコミュニケーションは、このようなリスクを軽減する効果があります。
効果的なコミュニケーションの方法
ステークホルダーとのコミュニケーションは、一方的な情報発信ではなく、双方向の対話であることが重要です。
以下に、効果的なコミュニケーション方法をいくつか紹介します。
- ウェブサイト・報告書: 企業のウェブサイトやサステナビリティ報告書などを通じて、CSVの取り組み状況や成果を分かりやすく伝えることが重要です。具体的なデータや事例を用いて、客観的に説明することを心がけましょう。
- 対話・意見交換会: ステークホルダーとの対話や意見交換の場を設けることで、直接意見や要望を聴取することができます。ワークショップやフォーラム、オンラインでの意見交換会などを活用すると良いでしょう。
- SNSの活用: Twitter、Facebook、LinkedInなどのSNSを活用することで、幅広いステークホルダーとタイムリーに情報共有や意見交換を行うことができます。
- メディアへの情報発信: 新聞、雑誌、テレビ、インターネットメディアなどを通じて、CSVの取り組みを発信することで、社会全体の理解を深めることができます。
- アンケート調査: 定期的にアンケート調査を実施することで、ステークホルダーの意見や満足度を把握することができます。
- 説明会・イベント: 投資家向け説明会や地域住民向けのイベントなどを開催することで、直接ステークホルダーとコミュニケーションを図ることができます。
コミュニケーションにおける重要なポイント
- 透明性: 情報開示は、正確で分かりやすく、タイムリーに行うことが重要です。都合の悪い情報も隠さずに開示する透明性が求められます。
- 双方向性: 一方的な情報発信ではなく、ステークホルダーからの意見や質問に真摯に耳を傾け、対話を重視する姿勢が重要です。
- 継続性: ステークホルダーとのコミュニケーションは、単発的なイベントではなく、継続的に行うことが重要です。長期的な視点で関係構築に取り組むことが求められます。
- 多様なチャネルの活用: ステークホルダーの属性や情報取得方法に合わせて、適切なコミュニケーションチャネルを選択することが重要です。
まとめ
CSV経営・マーケティングにおけるステークホルダーとのコミュニケーションは、単なる広報活動ではなく、企業と社会の持続的な発展のための重要な戦略です。
ステークホルダーとの信頼関係を構築し、協働していくことで、より大きな社会的価値と経済的価値を創造していくことができるでしょう。
第9章 CSVマーケティングの評価と改善/持続的な価値創造のために
CSVマーケティングは、単に施策を実行するだけでなく、その効果を継続的に評価し、改善していくことで、真の価値を創造します。
この章では、CSVマーケティングの取り組みを評価し、改善するための具体的な方法論について詳しく解説します。
CSVマーケティング評価の重要性
CSVマーケティングの取り組みを評価することは、以下の点で非常に重要です。
- 効果の可視化: 設定した目標に対して、どの程度成果を上げているのかを明確にすることで、取り組みの効果を可視化できます。
- 改善点の特定: 評価を通じて、取り組みの課題や改善点を特定し、より効果的な施策へとつなげることができます。
- ステークホルダーへの説明責任: ステークホルダーに対し、取り組みの成果や進捗状況を客観的に説明することで、信頼関係を構築できます。
- 投資対効果の明確化: CSVマーケティングへの投資が、社会的な価値と経済的な価値の両方にどのように貢献しているのかを明確にすることで、経営層への説明責任を果たすことができます。
CSVマーケティングの評価指標
CSVマーケティングの評価には、定量的な指標と定性的な指標の両方を活用することが重要です。
定量的な指標
- 売上高・利益率: CSVマーケティングに関連する製品・サービスの売上高や利益率の変化を測定します。
- 市場シェア: CSVマーケティングによって、市場シェアがどのように変化したかを測定します。
- 顧客満足度: CSVマーケティングに関連する顧客の満足度をアンケート調査などで測定します。
- 環境負荷削減量: 環境に配慮した取り組みの場合、CO2排出削減量や廃棄物削減量などを測定します。
- 地域社会への貢献度: 地域雇用創出数や地域経済への貢献額などを測定します。
定性的な指標
- ブランドイメージ: CSVマーケティングがブランドイメージに与えた影響を、アンケート調査やソーシャルメディア分析などで評価します。
- 従業員のモチベーション: CSVマーケティングへの取り組みが、従業員のモチベーションやエンゲージメントに与えた影響を調査します。
- ステークホルダーからの評価: ステークホルダーからのフィードバックを収集し、取り組みへの評価を定性的に分析します。
- メディア露出: CSVマーケティングに関するメディア露出の状況を分析し、社会的な認知度向上への貢献度を評価します。
これらの指標は、企業の事業内容やCSVマーケティングの目的によって適切なものを選択し、組み合わせることが重要です。
CSVマーケティングの評価プロセス
CSVマーケティングの評価は、以下のプロセスで進めることが推奨されます。
- 評価指標の設定: 上述の指標などを参考に、評価に使用する具体的な指標を設定します。
- データ収集: 設定した指標に基づいて、必要なデータを収集します。
- データ分析: 収集したデータを分析し、取り組みの成果や課題を明確にします。
- 評価結果の報告: 分析結果をまとめ、社内外の関係者に報告します。
- 改善策の立案: 評価結果に基づいて、取り組み内容や方法の改善策を立案します。
- 改善策の実行: 立案した改善策を実行し、効果を検証します。
このプロセスを継続的に繰り返すことで、CSVマーケティングの効果を最大化することができます。
ステークホルダーからのフィードバックの活用
CSVマーケティングの評価において、ステークホルダーからのフィードバックは非常に重要な情報源となります。
顧客、従業員、取引先、地域社会など、様々なステークホルダーからの意見や要望を収集し、取り組みの改善につなげることが重要です。
フィードバックの収集方法としては、アンケート調査、インタビュー、ワークショップ、ソーシャルメディア分析など、様々な方法が考えられます。
収集したフィードバックは、分析し、課題の特定や改善策の立案に活用します。
継続的な改善とPDCAサイクル
CSVマーケティングは、一度実施して終わりではなく、継続的に改善していくことが重要です。
PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を回すことで、取り組みの質を向上させ、より大きな社会的価値と経済的価値を創造することができます。
- Plan(計画): CSVマーケティングの目標や戦略、具体的な施策を計画します。
- Do(実行): 計画に基づいて、施策を実行します。
- Check(評価): 施策の実施結果を評価し、課題や改善点を特定します。
- Act(改善): 評価結果に基づいて、施策の改善策を立案し、実行します。
このサイクルを継続的に回すことで、CSVマーケティングの効果を最大化し、持続的な価値創造につなげることができます。
第10章 CSV経営・CSVマーケティングの先進事例/成功企業の戦略から学ぶ
CSV経営・CSVマーケティングを自社に導入するにあたって、実際に成功を収めている企業の事例を学ぶことは、非常に有益です。
先駆的な企業がどのようにCSVを事業戦略に組み込み、社会課題の解決と企業価値の向上を両立させているのかを知ることで、自社にとって最適なCSV戦略を策定するためのヒントを得られます。
この章では、ネスレとユニリーバの事例に加え、他の先進事例も紹介し、CSV経営・マーケティングの可能性と効果を多角的に考察します。
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ネスレ:サプライチェーン全体で共有価値を創造
ネスレは、「Creating Shared Value(共有価値の創造)」という言葉を積極的に活用し、CSV経営の先駆者として知られています。
同社は、事業活動が及ぼす社会への影響を深く認識し、サプライチェーン全体で共有価値を創造することを目指しています。
特に注目すべきは、発展途上国の農家との直接取引です。
ネスレは、コーヒー豆やカカオ豆などの原材料を、仲介業者を通さずに農家から直接購入することで、農家の収入向上と生活水準の改善に貢献しています。
同時に、高品質な原材料を安定的に確保することで、自社製品の品質向上とブランドイメージの向上にもつなげています。
さらに、ネスレは農家への技術指導や融資支援なども行い、持続可能な農業の実現にも貢献しています。
これは、単なる原材料の調達ではなく、農家の自立支援を通じて長期的なパートナーシップを構築し、サプライチェーン全体の持続可能性を高めるという、CSVの典型的な事例と言えるでしょう。
ユニリーバ:サステナブルな生活をすべての人に
ユニリーバは、「サステナブルな生活をあたりまえに」というパーパスを掲げ、環境負荷の低減と人々の健康・衛生環境の改善に積極的に取り組んでいます。
同社は、製品ライフサイクル全体を通して環境への影響を評価し、持続可能な原材料の調達、省資源化、廃棄物削減などを推進しています。
例えば、ユニリーバの洗剤ブランド「アタック」は、環境に配慮した濃縮タイプや詰め替えタイプを積極的に展開し、プラスチック使用量の削減に貢献しています。
また、石鹸ブランド「ライフボーイ」は、発展途上国で手洗いの重要性を啓発する活動を展開し、感染症の予防に貢献しています。
これらの取り組みは、環境課題や衛生課題の解決に貢献するだけでなく、環境意識の高い消費者からの支持を獲得し、企業のブランド価値向上にもつながっています。
ユニリーバは、CSVを事業成長の重要な要素と捉え、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を両立させています。
その他の先進事例
- キリン: 「酒類メーカーとしての責任」を重視し、地域社会との共創による地域活性化や、環境負荷低減に向けた取り組みを推進しています。特に、東日本大震災を契機にCSV経営を本格化させ、被災地の復興支援や地域産業の活性化に貢献しています。
- 味の素: アミノ酸の技術を活用し、健康寿命の延伸や食料問題の解決に貢献する事業を展開しています。例えば、高齢者向けの栄養補助食品の開発や、途上国での栄養改善プログラムの実施など、CSVに基づいた事業活動を積極的に展開しています。
- 富士フイルム: 写真フィルム事業で培った技術を応用し、ヘルスケア、高機能材料、ドキュメントソリューションなどの分野で事業を多角化しています。特に、ヘルスケア分野では、医療機器や医薬品の開発を通じて、人々の健康増進に貢献しています。
事例から学ぶCSV成功のポイント
これらの事例から、CSV経営・マーケティングを成功させるためのいくつかの重要なポイントが見えてきます。
- 事業と社会課題の明確な関連付け: 自社の事業と関連性の高い社会課題を選定し、その解決に貢献する事業活動を展開することが重要です。
- 長期的な視点: CSVは短期的な利益を追求するものではなく、長期的な視点で取り組むことで、持続的な価値創造につながります。
- ステークホルダーとの連携: 地域社会、NGO、行政など、様々なステークホルダーと連携することで、より大きな社会的インパクトを生み出すことができます。
- 明確な目標設定と評価: CSVの取り組みに対して明確な目標を設定し、定期的に評価を行うことで、取り組みの効果を可視化し、改善につなげることができます。
これらの事例とポイントを参考に、自社の事業特性や強みを活かしたCSV戦略を策定することで、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現することが可能になります。
CSV関連書籍一覧
- Branding経営(ブランディング経営) 社員に向き合い続けることが、最良の道/関野吉記
- CSV経営―社会的課題の解決と事業を両立する/赤池学
- CSV時代のイノベーション戦略 「社会課題」から骨太な新事業を産み出す/藤井剛
- CSV経営戦略―本業での高収益と、社会の課題を同時に解決する/名和高司
- 中小企業が成長するSDGs経営5つのアプローチ/平野芳久
CSVマーケティング関連サイト一覧
- CSVとは?CSRとの違い・企業事例を教えてください。/おしえて!アミタさん
- CSV戦略コンサルティング・CSV型プロモーション実行支援/メンバーズ
- CSVとは何か?CSRとの違いは?ネスレも取り組むポーター教授の差別化戦略の本質/ビジネス+IT
- CSV経営とは?CSRとの違いや実践方法とポイント、企業事例を紹介/朝日新聞デジタル
- CSVとは?「CSRとの違い」とCSVの導入事例を知っておこう/起業TV
CSV経営・マーケティングで差別化を図る/社会的価値と経済的価値の創造に向けた戦略のまとめ
CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)経営・マーケティングは、現代の企業経営において、単なる流行や一時的な取り組みではなく、持続的な成長と社会貢献を両立するための不可欠な戦略として、その重要性を増しています。
このページでは、CSV経営・マーケティングの基本概念から実践方法、そして先進事例までを幅広く解説してまいりました。
このまとめでは、改めてCSV経営・マーケティングの本質と、企業が取り組むことの意義、そして導入を検討する際のポイントを整理し、皆様のビジネスにおけるCSV戦略構築の一助となることを目指します。
CSV経営・マーケティングの本質:社会課題解決と企業価値向上の融合
CSV経営・マーケティングの本質は、社会課題の解決と企業の利益追求を二律背反のものとして捉えるのではなく、両者を融合させ、相乗効果を生み出すことにあります。
従来のCSR(企業の社会的責任)が、利益追求とは別の次元で社会貢献活動を行うという考え方であったのに対し、CSVは事業そのものを通じて社会的な価値を創造し、それが結果として企業の競争力強化や持続的な成長につながるという点が大きな違いです。
つまり、CSVは「Doing Well by Doing Good(良いことをすることで業績を上げる)」という考え方を体現しており、社会貢献をコストではなく投資と捉え、長期的な視点で企業価値の向上を目指します。
社会のニーズと企業の強みを結びつけることで、新たな市場を創造し、イノベーションを促進し、ステークホルダーからの信頼を獲得することができます。
CSV経営・マーケティングに取り組む意義:持続可能な成長と社会からの信頼獲得
企業がCSV経営・マーケティングに取り組む意義は多岐に渡ります。
まず、社会課題の解決に貢献することで、社会からの信頼と評価を高めることができます。
これは、企業イメージの向上だけでなく、優秀な人材の獲得や顧客ロイヤルティの向上にもつながります。
また、CSVは新たな市場やビジネスチャンスの創出につながる可能性を秘めています。
社会のニーズに応える製品やサービスを開発することで、既存市場における競争優位性を確立したり、新たな市場を開拓したりすることができます。
さらに、バリューチェーン全体を見直し、社会的な課題を解決しながら生産性を向上させることで、コスト削減や効率化を実現することも可能です。
長期的な視点で見れば、CSVは企業の持続可能性を高めるための重要な要素となります。
気候変動、資源枯渇、貧困、格差といった社会課題は、企業活動にも大きな影響を与えます。
これらの課題に積極的に取り組むことで、将来的なリスクを軽減し、持続可能な社会の実現に貢献することができます。
CSV経営・マーケティング導入のポイント:戦略的な視点とステークホルダーとの連携
CSV経営・マーケティングを導入する際には、以下のポイントを意識することが重要です。
- 戦略的な視点: CSVは単なる社会貢献活動ではなく、事業戦略の中核に据えるべきものです。自社の事業と関連性の高い社会課題を選定し、事業を通じてどのように解決に貢献できるかを明確にする必要があります。
- ステークホルダーとの連携: CSVを成功させるためには、顧客、従業員、取引先、地域社会、投資家など、様々なステークホルダーとの連携が不可欠です。ステークホルダーとの対話を通じて、社会のニーズを的確に捉え、共創していく姿勢が重要です。
- 長期的な視点: CSVは短期的な利益を追求するものではなく、長期的な視点で取り組むべきものです。継続的な取り組みと評価を通じて、改善を重ねていくことが重要です。
- 測定可能な指標の設定: CSV活動の成果を客観的に評価するために、具体的な測定可能な指標を設定することが重要です。これにより、進捗状況を把握し、必要に応じて戦略を修正することができます。
まとめ
CSV経営・マーケティングは、企業が社会の一員として責任を果たすだけでなく、持続的な成長を実現するための重要な戦略です。
社会課題の解決と企業価値の向上を両立させることで、企業は社会からの信頼を獲得し、長期的な競争優位性を確立することができます。
本このページで解説した内容を参考に、自社におけるCSV経営・マーケティングの導入を検討し、持続可能な社会の実現に貢献していくことを期待します。