[最終更新日]2024/09/16
「リーダーシップ」と「マネジメント」はビジネスにおいて必要だということは認識している方が多いと思います。特に部下を持つ立場になるリーダーや管理職、経営者にとって「リーダーシップ」と「マネジメント」は更に重要です。
しかし、海外ではしっかりと使い分けされている「リーダーシップ」と「マネジメント」を日本ではしばしば混同されがちです。
違いや使い分けを説明するとなると頭の中に「?」が出てきてしまうリーダーも多いのではないでしょうか?
- 「リーダーシップ」と「マネジメント」の役割は?
- 「リーダーシップ」と「マネジメント」のアプローチ方法は?
今回は、そんな混同されがちな「リーダーシップ」と「マネジメント」の違いとリーダーが備えるべき能力についてもわかりやすく説明いたします。
リーダーシップについて
ビジネス現場で流れるスピードは非常に速くなっています。短期間で一定の成果を出さなければならないなんて事は日常です。
成果を出すためには、組織内においてメンバーそれぞれが最大限の力を発揮し、チーム全体として効率的に業務遂行する事が重要です。
その組織内において重要視されているのが「リーダーシップ」です。
しかし、そんな重要視されているリーダーシップですが「リーダシップとはどういったものでしょうか?」とメンバーから尋ねられた時に自信をもって回答出来るリーダーの方は決して多くはないと思います。
それではリーダーシップとはいったいどういったモノなのでしょうか?
リーダーシップとは?
リーダーシップのあるリーダーとは、メンバーに指示を与えてメンバーを動かすスキルがあることを言うのではありません。
リーダーシップとは一言で言えば、変革を推し進めることを言います。「指導力・統率力」といった言葉でも表現される事があります。変革の推進とは人だけではなく組織全体を動かすという事です。
つまり、一定の目標を達成する為にチーム内のメンバーに対して行動を促す力のことです。組織の中で目標を定めて、チームを作るもしくは維持したりし、成果を出す能力です。
また、リーダーシップは集団を目標達成する為にメンバーの行動を導きながら、新たなルールや仕組みを作ります。
不確実性の高い状況において長期的ビジョンを提示したり、ビジョンを示すことでメンバーをまとめたり(メンバーの統合)やメンバーの動機付けなどを行っています。
経営学の学者でもあるピータードラッガーはリーダーシップについて以下の3つを定義しています。
フォロワーシップの重要性
フォロワーシップとは日本語で一言で表現すれば、「リーダーへの自律的支援」と「組織への主体的貢献」 です。
メンバーという立場の人が目的共有するチームメンバーに対して主体的に働きかけることです。
フォロワーシップは受け身ではありません。自律性と主体性が問われます。
このフォロワーシップはリーダーだけではなくすべてのメンバーに求められるものですが、リーダーには更に求められます。
リーダーシップを仕事と捉える
リーダーシップは資質や才能などではありません。また、カリスマ性などでもなく仕事です。
リーダーシップをそのように捉える必要があります。
リーダーシップを、地位や特権ではなく責任と見ること
リーダーシップは地位や特権で得るものではありません。
リーダーは融和的に組織やチームを目標に導きつつ、責任は自分にあるという潔さを持った存在です。
リーダーシップのポイント
リーダーシップのポイントは以下の3つに分けられます。
目標達成のためのビジョンを示す
組織発展のためには、リーダーだけの力だけでなくメンバーの力が必要です。
リーダーはメンバーにチームが目指すことや方針(ビジョン)をわかりやすく明確に伝える必要があります。
ビジョンを共有することは、チーム内のメンバーに一体感が生まれます。
一体感が生まれた後は、目的達成に向けた行動が起こしやすくなります。
ビジョンが実現するように、スタッフのモチベーションを維持しながら励ます
リーダーシップには、メンバーのモチベーションを高める力が必要です。
モチベーションを高める事はメンバーが自発的に動いてもらうことに繋がり、生産性が向上します。
モチベーションを高めてやる気を出すためには、メンバーの承認欲求を満たす方法があります。
ポジティブな言葉や発言を意識し、メンバーそれぞれの長所を見つけて褒めたり称賛したりしましょう。
ビジョンを実現するにあたって問題となる部分を解消する
どのようなビジョンであっても問題は発生します。
問題が発生した際にリーダーは、目的達成のために自ら進む行動力が求められます。
行動する為には決断力も必要となります。
決断がなされない状況下では、チーム内に不安や混乱が生じます。
しかし、リーダーが率先して決断し行動することでメンバーも行動を起こしやすくなります。
リーダーシップを高める方法
リーダーシップという能力は、生まれ持ったもの才能や資質ではなく、努力によって高めていくことができます。
一説にはリーダーシップは生まれ持った才能や資質なのだという考え方もあります。しかし、もし生まれ持った才能や資質なのなら、状況や集団を構成しているメンバーによって左右されることはありません。
現実として状況やメンバーによってリーダーシップを発揮できない状況は多々あります。
となりますと、やはりリーダーシップは学習や経験などによって高めていくことが出来るものと考えられます。
それでは、リーダーシップを高めるために実践できることをご紹介します。
- 常に意思決定を意識する
意思決定に必要な発想力・決断力・行動力を身につけましょう。
常に意思決定を行っていくことが効果的です。食事を選ぶ際にも、どれを食べた方が良いのか等を発想し決断し行動しましょう。こういった日々の積み重ねが仕事の場面での意思決定に役立つのです。
また、その意思決定にも理由やこだわりを持つようにしましょう。
明確な意思やこだわりがあることで、困難に思えることでも実行する行動力が身につきます。 - プライベートの人間関係を充実させる
チーム内の人間関係はとても重要です。しかし、「類は友を呼ぶ」という諺の通り、似た考えの人が集まったり、考え方が硬直してしまう恐れがあります。
硬直化防止の為に、チーム以外の人との人間関係を意識し積極的に充実させるようにしましょう。 - チームメンバーを信頼する
チームメンバーからの信頼を得る為には、まずリーダーがメンバーを信頼する必要があります。リーダーとして一定程度の統率は必要ですが、自由度を高めることは信頼する気持ちに繋がり、信頼関係構築に役立ちます。
マネジメントについて
リーダーシップと同様にマネジメントスキルというのはビジネスにおいて重要視されています。
マネジメントとは、英単語をそのまま訳せば「管理」や「経営」という意味を持ちますが、現代では組織の管理や運営を示す言葉として広く使用されています。
マネジメントという言葉は、起業コンサルタントや経済学者として活躍したピーター・ファーディナンド・ドラッカーのマネジメントから生まれたとされています。
それではマネジメントとはいったいどういったことを言うのでしょうか?
マネジメントとは
ピーター・ドラッガーは上記の著書内でマネジメントのことを「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」と定義しています。また、マネジメントを遂行する人のことを「マネージャー」と呼びます。
そんなマネジメントですが、企業内においては、効率的な組織運営をする為に人と組織を管理することを言います。つまり、定められた戦略やルールに基づき効率的に組織を運営する機能の事を言います。
具体的には、組織として成果を上げるためにヒト・モノ・カネ・情報などの機能、機関を効率的に活用、運用して、更にリスク管理を行った上で、設定した目標達成を目指すことをいいます。
マネジメントに必要なスキルは以下の通りです。
- 意思決定のスキル
チーム内で意思決定を行う際に、全会一致という事はあまりありません。
どのようなことでも何らかの意思決定をしなければなりません。この判断がぶれてしまうとメンバーへ不信感を与えることに繋がってしまいます。 - コミュニケーションのスキル
様々なメンバーが働く組織で仕事をするのに意思の疎通は不可欠です。
同じ目標に向かい仕事を進めていくためには、チーム内の認識を共通にし、その際に必要なのがコミュニケーションスキルです。
コミュニケーションはキャッチボールです。つまり双方向に成されるものです。
発信する人は、受信する人を理解しなければならず、受信する人は理解してくれているのか、そもそも受け入れられているのか等、コミュニケーションの受け側が部下でも、取引先でも同様ですが、受信する人について理解してコミュニケーションを取ることが重要です。 - 管理するスキル
管理するスキルとは実績に対する評価を行い、現状を把握し必要であれば軌道修正が必要かどうかを判断します。
評価を行うことは仕事内容や業務の進捗状況を確認する事に役立ち、フィードバックにも活かしましょう。
評価とフィードバックはメンバーとの密なコミュニケーションにも繋がります。
また、同時に言いやすい組織風土構築にも役立ち、言いやすい組織風土は管理する際に役立ちます。 - 分析するスキル
組織を目標達成を目指すために様々なモノを分析するスキルが重要です。4大経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報を蓄積した知恵や知識、技術などと共に資産や資源、リスクの分析および管理に活かすことが必要です。
マネジメントスキルを高める方法
マネジメント能力もリーダーシップと同様に高めることが可能です。
マネジメントスキルには「アセスメントスキル」「アカウンタビリティスキル」「コーチングスキル」があります。
それでは、マネジメントスキルを高めるために実践できることをご紹介します。
アセスメントスキルについて
アセスメントスキルは、メンバーの「能力(ポテンシャル)」「行動傾向」「育成のポイント」を的確に把握するスキルの事を言います。
メンバー育成の基本的なスキルですので、不足しているとメンバーの育成が非効率になってしまいます。
アセスメントの基本はメンバーとのコミュニケーションですが、『1on1の対話』で向き合って話すという事が大前提です。月に1回程度の1on1での面談機会を設けるなどして実践しましょう。
普段からメンバーそれぞれの気になる点や良い点などをメモに残したり、強みや弱みの把握は質問などして理解しましょう。
アカウンタビリティスキルについて
アカウンタビリティスキルは相手にわかりやすく、且つ具体的に伝えていくスキルを言います。相手が理解していることが重要であり、自身が理解し説明したこととは一致しません。
つまり、相手が理解できる言葉で、相手が納得するまで十分説明する必要があり、相手からの質問にも、相手が理解できるように答えることが重要です。
語彙力を高めたり、ジェスチャー、ボディランゲージを取り入れたりすると相手に伝わりやすくなります。
コーチングスキルについて
コーチングスキルは能力を引き出すスキルを言います。コーチングスキルはメンバーの強みや長所を把握し、その点を最大限発揮するように導きます。
コーチングスキルはアセスメントスキルと同様に、メンバーとコミュニケーションを重ねることが大切です。コミュニケーションにより強みや長所を正しく把握することが、適切な仕事の割り振りに繋がり、成果を上げやすくなるからです。
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リーダーシップとマネジメントの違い
「リーダーシップ」と「マネジメント」いずれにしてもメンバーとの強い繋がりという面では同じです。
それでは、「リーダーシップ」と「マネジメント」の違いとは何なのでしょうか?以下にまとめています。
リーダーシップ | マネジメント | |
---|---|---|
時間軸・視野 | 未来的・中長期的・将来 | 現実的・短期的・今 |
影響力の根源 | 人望・人間性 | 地位・権限・規則 |
使命 | 創造的破壊 | 秩序の維持 |
タイミング | 変化を求められている時 | 確実に何かを成し遂げたい時 |
核となるスキル | 人間的魅力、先見性 | 管理調整能力 |
役割 | ・模範、整備、権限委譲、補佐 ・何をするか考える ・メンバーの士気を高める |
・目標の達成、維持、調整 ・メンバーを管理調整していく人 ・目標達成のためにやり繰りを考える人 |
上記を踏まえた上で「新しい挑戦をする場合」「定常業務をする場合」に分けて説明いたします。
新しい挑戦をする場合に必要なリーダーシップ
リーダーシップは、ビジョンを明確にしてメンバーと共に目的達成へ導く力です。ビジョンと結果に着目し、目標達成に向けて、不確実性の高い状況にあったとしてもチーム全体を導いていくことが必要です。
新しい挑戦をする場合には「管理するルール」等はなく不確実性が高い状況にあります。つまり、新しい挑戦をする場合には「リーダーシップ」を活用して人と組織を動かし変革を推進し戦略やルールを作っていきます。
新しい挑戦をする場合には「マネジメント」よりも「リーダーシップ」が必要です。
定常業務をする場合に必要なマネジメント
マネジメントは、目標・目的達成のための手段を定め、管理することです。マネジメントでは現実的、短期的な視野でものごとを考えていくことが重要です
定常業務をする場合にはその「管理するルール」があります。また、定常業務をする場合には「不確実性の高い状況」にはありません。
つまり、定常業務をする場合には、計画を立てメンバーの活動を管理しながら業務を進める方が効率が良いでしょう。
定常業務をする場合には「リーダーシップ」よりも「マネジメント」が必要です。
このように「リーダーシップ」と「マネジメント」は目的や状況によって使い分ける必要があります。
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シチュエーショナルリーダーシップについて
また、「リーダーシップ」と「マネジメント」の使い分けは目的や状況だけではありません。
「メンバー」それぞれによっても使い分けていく必要があります。これをシチュエーショナルリーダーシップと言います。
これは以下のようにメンバーの業務習熟度によって使い分けることが可能です。
指示的行動 | 援助的行動 | 業務習熟度 | |
---|---|---|---|
指示型(S1) | 多い | 少ない | 低い |
コーチ型(S2) | 多い | 多い | S1より高い |
援助型(S3) | 少ない | 多い | S4より低い |
委任型(S4) | 少ない | 少ない | 高い |
指示型(S1)
具体的に指示を与えて、監督してメンバーの動を統制する
コーチ型(S2)
メンバーの意見を取り入れつつも指示を与える
援助型(S3)
メンバーのモチベーションをあげた上で、メンバーの意見や能力を尊重し達成を支援をする
委任型(S4)
メンバーに対して自由度高く権限移譲をして行動してもらう
また、型によって「リーダーシップ」と「マネジメント」を使用する強弱は以下のようになります。
リーダーシップ | マネジメント | |
---|---|---|
指示型(S1) | 弱い | 強い |
コーチ型(S2) | S1より強い | S1より弱い |
援助型(S3) | S4より弱い | S4より強い |
委任型(S4) | 強い | 弱い |
しかし、リーダーへのアンケートでは、リーダーにより得意な型があり得意な型を中心に使う傾向が高くなっています。
つまり、メンバーによって使い分けることが出来るリーダーはまだまだ少ないのが現状です。
是非、このページをご覧いただい方はメンバーに応じた「リーダーシップ」と「マネジメント」を使い分けて、組織やチームの力を最大限に発揮できるように努めてください
参照:ケン・ブランチャード/ケン・ブランチャード リーダーシップ論(シチュエーショナルリーダーシップ)
まとめ
「リーダーシップ」と「マネジメント」に優劣はありません。
リーダーが達成すべき目標に変わりはなく、その達成すべき為の具体的な手法が「リーダーシップ」であり「マネジメント」なのです。
つまり、リーダーに必要なのは「リーダーシップ」と「マネジメント」の使い分けです。
新しい挑戦をする際には、リーダーシップを発揮し、中長期的なビジョンをメンバーに共通し、自発的にいろいろとチャレンジしてもらいましょう。そして、その中でルールとなる定型業務を定めていきます。
定型業務が決まれば、管理を怠らずに、効率より、ミスなく行えるようにマネジメントを行います。
これが「リーダーシップ」と「マネジメント」の使い分けになります。
参照:ジョン・P・コッター/リーダーシップ論