範囲の経済とは/具体例で規模の経済・経験曲線・密度の経済の違いをわかりやすく解説 | キャリアコンサルタントドットネット

範囲の経済とは/具体例で規模の経済・経験曲線・密度の経済の違いをわかりやすく解説

[記事公開日]2021/06/16
[最終更新日]2021/09/10
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社会人になってから上司や先輩から「範囲の経済も知らないのか?」なんて言われた事がある人も多いはずです。

これからビジネスを拡大させようと考えている企業に勤めているはもちろん、今後起業独立を考えている人は「範囲の経済」を知っておいて損はありません。

そんな社会人になってから知っておいた方が良かったと思われる「範囲の経済とは/具体例で規模の経済・経験曲線・密度の経済の違いをわかりやすく」を初心者向けにわかりやすく説明いたします。

 

範囲の経済について

範囲の経済について範囲の経済とは、共有することが可能なコストを一元化することで経済的な運営が可能になるように、異なる複数の事業活動を行い、企業の経営の効率性を図ることを言います。

例えば「銀行が証券会社を運営し顧客開発のコストを削減」など範囲の経済性の良い例です。

このように複数の事業(銀行と証券会社)で経営資源(顧客情報)を共有化することで、経済性を高める効果がある状態を「範囲の経済が効く」と言います。

しかし、範囲の経済を魅力的に感じ「範囲の経済を・・・」と安易に追い求めるばかりに、経営戦略を練ってしまうと「範囲の不経済」になるので注意が必要です。

 

範囲の不経済とは?

範囲の不経済とは?「銀行にお金を預けるだけのお金を持っている顧客情報を活かし、その持っているお金を証券などに活かしてもらう」ことで範囲の経済が効くのであって、「顧客情報」があるから範囲の経済が効くのではありません。

このように、全ての資産が有効活用できるとは限らないということです。

これは「範囲の不経済」と言います。

範囲の不経済に陥らないようにするために以下の点に注意が必要です。

 

資産すべてが有効活用できる訳ではない

資産すべてが有効活用できる訳ではない範囲の経済は現在の資産を活用するという事が重要なポイントです。しかし、現在ある資産すべてが有効活用できる訳では決してありません。

上記の銀行業で説明すれば、富裕層の顧客情報があるからと言って「格安スーパー」の宣伝をしても効果は期待出来ません。

このように現状の資産には、有効活用できる資産と有効活用できない資産との2種類があるという事を理解していなければなりません。

つまり、保有資産を多く所持しているから新規事業を始めるというのではなく、新規事業に活かすことが出来る資産なのかという事を冷静に判断する必要があるということです。

上記で説明した銀行の場合は、富裕層の顧客情報だけではなく、一般的な所得の顧客情報など幅広い情報があるので一定の効果は期待できるかもしれません。

 

幅を広げ過ぎると「資産」が分散してしまう

幅を広げ過ぎると「資産」が分散してしまう事業拡大をすればするほどにコスト削減効果が期待出来る訳ではありません。理由は拡大すればするほどに現在の資産では対応出来なくなるからです。

拡大すればするほどに現状の資産以上に設備や人件費などがかさむ事が考えられます。これは範囲の不経済だけではなく、企業としてのブランドにも影響することが考えられます。

 

範囲の不経済のまとめ

範囲の不経済のまとめこのように現在の資産が効率的に活用できるからと安易な事業拡大は慎重に判断する必要があります。

ただ、範囲の経済を効率的に運用し実現すると、短期間に大きく成長できることが考えられます。

保有資産が多いからと安易に事業規模の拡大をするのではなく、慎重に検討を重ねて経営計画を立てる必要があるのです。

 

「範囲の経済」と「規模の経済」「経験効果」「密度の経済性」の違いについて

「範囲の経済」と「規模の経済」「経験効果」「密度の経済性」の違いについて「範囲の経済」と「規模の経済」「経験効果」は言葉が似ており、内容も似ていることから混同してしまう事があります。

それでは、どのような違いがあるのでしょうか?

「規模の経済」「経験効果」「密度の経済性」をわかりやすく説明いたします。

 

規模の経済とは?

規模の経済とは?規模の経済とは、1個100円のトマトを3個なら200円で販売しているスーパーと同じようなものです。

たくさん買ってくれる人には安くしますの逆で「たくさん作れば安く作れます」という事です。

Aという製品をたくさん作ることで原材料費の値下げが可能になります。一個当たりの費用は次のようになります。

一個当たりの費用=(固定費+変動費)÷生産量

つまり、規模の経済とはこの変動費を低く抑えることが出来るので、多く作れば作るほどに一つの原価が減少するので同じ利益を得ていたとしても販売価格は低くする事が出来るのです。

 

経験効果とは?

経験効果とは?

経験効果とは、人間は誰でも経験を積み重ねればコツをつかんで要領よく出来るようになるのを効果として考えたようなものです。

つまり、経験効果は、生産する量や作業する量が増えるとその分の経験則が積み上げられて、一個あたりの単位生産コストが低下する効果のことです。

早くできれば同じ時間に多くの量を生産出来るそれが経験効果です。

 

密度の経済性とは?

密度の経済性とは?密度の経済性とは、あるエリアに集中して事業を展開することで生じる経済効果です。

密度の経済性で有名な会社はコンビニ大手の「セブンイレブン」です。さっきも「セブンイレブンあったよね?」なんて会話も日常的にあるのではないでしょうか?

それ程セブンイレブンは密度の経済性を意識しています。ドミナント戦略とも言われています。

そのエリアに集中して事業展開することで、物流コストや広告費を共有することができ、知名度も高くなるのです。

他にもエリアを大きく捉えて、北海道では「アークス」関西地方の滋賀県では「平和堂」和歌山では「オークワ」中国地方では「大黒天物産」など地方限定のスーパーなどもあり、これも密度の経済性の活用です。

 

範囲の経済の具体例

範囲の経済の具体例

範囲の経済は実社会においてどのように活用されているのでしょうか?

範囲の経済の具体例は次の通りです。

 

ゼンショーグループ(ゼンショーホールディングス)/範囲の経済具体例①

ゼンショーグループ(ゼンショーホールディングス)/範囲の経済具体例①

ゼンショーと聞いても知らない方も多いとは思いますが、ゼンショーグループは以下のブランドで様々な飲食店を営業しています。

■すき家■なか卯■はま寿司■ココス■ビッグボーイ■ヴィクトリアステーション■ジョリーパスタ■エルトリート■華屋与兵衛■牛庵■焼肉倶楽部いちばん■熟成焼肉いちばん■宝島■伝丸■久兵衛屋■瀬戸うどん■たもん庵■モリバコーヒー■カフェミラノ

ジャンルも様々でありブランド名の知名度が高い企業です。このゼンショーグループは、範囲の経済性を活用しています。

ゼンショーグループは仕入れたものを共有することで全体的に大きく仕入れコストを削減しています。これが範囲の経済の活用です。

また、飲食業界という同業界で様々な事業展開を行い、すべての店舗で注文システムや調理方法や美品などを共通するなども範囲の経済の活用と言えます。

他にも飲食業界では、コロワイドグループやモンテローザグループも多くのブランドで様々な飲食業を展開しており範囲の経済を活用していると言えます。

 

SHARP(マスクの製造)/範囲の経済具体例②

SHARP(マスクの製造)/範囲の経済具体例②SHARPといえば、テレビなど家電を主に製造している電機メーカーです。しかし電機メーカーであるSHARPが、新型コロナウイルスの影響でマスク不足に陥った際にマスクの製造を開始しました。これも範囲の経済の活用が大きく働いています。

冷蔵庫とマスク、テレビとマスクと言っても関連性は見受けられません。しかし、製造過程においては大きく関連性があります。

それが、冷蔵庫、テレビ、マスクの製造過程に必須のクリーンルームです。簡単に説明すればどれもキレイな場所でしか製造できません。

冷蔵庫などに必須の半導体の製造時にはキレイな場所で製造しなければなりません。そんな半導体と同じでマスクの製造はキレイな場所で製造しなければならない、これが範囲の経済に影響を与えたのです。

クリーンルームがなければ製造には更に多くの準備が必要だったのですが、元からあるクリーンルームを活用して全く別のマスクの製造に活用したのです。

このように元々ある設備を活かすことで範囲の経済は生み出されました。

また、同様に新型コロナウイルスは飲食店事業に大きな影響を及ぼしていますが、店前にある自動販売機で焼肉のタレを販売したり、出汁を販売したりするのも範囲の経済と言えます。

他にも新型コロナウイルスの影響で人を運べない航空業界や鉄道業界がモノを運ぶことも範囲の経済ということが出来るのではないでしょうか?

 

Amazon/範囲の経済具体例③

Amazon/範囲の経済具体例③Amazonといえば今では誰もが知っている世界最大のインターネットショッピングの会社です。

元々は本だけを販売していました。

本だけを販売していたときに多くのコストをかけて物流システムや倉庫を構築し、環境が整ったところで様々な商品を販売して事業拡大に成功しました。

本を売るための仕組みと顧客名簿があったので範囲の経済を活かすことが出来たのです。

 

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範囲の経済とは/具体例で規模の経済・経験曲線・密度の経済の違いをわかりやすく解説のまとめ

範囲の経済とは/具体例で規模の経済・経験曲線・密度の経済の違いをわかりやすくのまとめいかがだったでしょうか?

範囲の経済は具体例で理解いただけたでしょうか?

規模の経済・経験曲線・密度の経済の違いで今後のビジネス戦略に活かしていただければ幸いです。

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