[最終更新日]2023/01/25
近年、TVの報道番組やニュース番組、Yahooなどのインターネットニュースはもちろん、TwitterやInstagramのSNS界隈でも「リカレント教育」という言葉が注目を集めています。
また、「リカレント教育に力をいれる」などと、厚生労働省、経済産業省、文部科学省等が中心になり国会の政府答弁でも耳にする機会が多くなっているのではないでしょうか?
そんな「リカレント教育」ですが、社員研修や社員教育とは何が違うのでしょうか?
リカレント教育の定義や事例などを踏まえてわかりやすく説明いたします。
Contents
- 1 リカレント教育とは?
- 2 リカレント教育が注目される理由
- 3 リカレント教育と生涯教育は何が違うのか?
- 4 日本でリカレント教育が普及しない理由
- 5 なぜ「リカレント教育」への注目が高まるのか?/理由から考える背景9個
- 5.0.1 技術革新と市場の急速な変化/リカレント教育が注目される理由①
- 5.0.2 雇用の流動化の加速/リカレント教育が注目される理由②
- 5.0.3 人生100年時代の到来/リカレント教育が注目される理由③
- 5.0.4 ライフスタイルの変化/リカレント教育が注目される理由④
- 5.0.5 DX(デジタルトランスフォーメーション)・働き方改革/リカレント教育が注目される理由⑤
- 5.0.6 労働者不足・人材不足の解消/リカレント教育が注目される理由⑥
- 5.0.7 競争力の向上/リカレント教育が注目される理由⑦
- 5.0.8 「Society 5.0」の到来/リカレント教育が注目される理由⑧
- 5.0.9 デジタルディスラプション/リカレント教育が注目される理由⑨
- 6 リカレント教育のメリット/企業側・従業員側で考える
- 7 リカレント教育の日本における現状について
- 8 リカレント教育で学び直すべき課題や領域
- 9 国が進める制度としてのリカレント教育
- 10 リカレント教育の実施例(企業別)
- 11 リカレント教育関連書籍一覧
- 12 リカレント教育関連サイト一覧
- 13 リカレント教育とは?わかりやすく簡単に理解/プログラム専門事業で人材支援のまとめ
リカレント教育とは?
リカレント教育とは、政府広報オンラインでこのように定義されています。
リカレント教育
学校教育からいったん離れて社会に出た後も、それぞれの人の必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返すことです。
リカレント教育の「リカレント(recurrent)」は「繰り返す」や「循環する」という意味です。
つまり、リカレント教育とは、「教育を繰り返す」や「循環する教育」といった意味で「社会人の学び直し」とも呼ばれています。
しかし、最近になってどうして「リカレント教育」は注目されているのでしょうか?
リカレント教育が注目される理由
リカレント教育が注目される理由は、世界から考えれば特殊な日本の働き方について理解する必要があります。
それでは、まずは世界から見れば特殊な日本の働き方について説明いたします。
なお、日本の働き方については「日本型雇用」と呼ばれています。
日本型雇用について
日本ではごくごく当たり前なのですが、世界と比較すればとても特徴のある働き方がされています。
それが次の3つです。
- 終身雇用
- 年功序列
- 企業別労働組合
「日本型雇用」は、この「終身雇用」「年功序列」「企業別労働組合」の3つに支えられてきた雇用システムで、労働者にとって「三種の神器」とも呼ばれています。
それでは具体的に「日本型雇用」を支えてきた「三種の神器」の「終身雇用」「年功序列」「企業別労働組合」をそれぞれ説明していきます。
終身雇用/日本型雇用三種の神器①
日本型雇用三種の神器の1つ目の終身雇用とは、一つの企業が定年まで従業員(正社員)を雇用し続ける制度のことです。
よほどのことがない限り、クビ(解雇)されることはなく定年まで働き続けることが出来ます。
ただし、制度といっても法律や条例などで定められたわけではありません。
戦後の日本が急成長した「高度経済成長期」では、多くの労働力を必要としていました。
そんな中で多くの優秀な労働力を獲得するために、企業は定年まで安心して働いてもらえる制度として終身雇用制度を掲げるようになりました。
ただ、すでに人口減少している日本において将来的に高度経済成長を見込めない現在では、誰にも将来を見通すことが出来ないために、終身雇用制度はただの幻想と言えるかもしれません。
年功序列/日本型雇用三種の神器②
日本型雇用三種の神器の2つ目の年功序列とは、年齢、勤続年数によって給料や役職、出世するスピードを合わせる人事的な制度を言います。
上述した「終身雇用」が当然の場合、勤続年数が長ければより多くのより高いスキルを身につけており、会社に貢献することが高く、年齢が高い場合も同様で、こういった考え方に基づいています。
年功序列制度は、安心した将来設計ができるといった面で長く働き続けるので離職率は低下します。
また、人事評価なども容易になります。
ただ、一生懸命に働いても働かなくても一緒といった面で成果主義とは対極にあり、能力のある夢のある入社してくる従業員に対しての労働力の意欲の面ではマイナスに働くためにデメリットと言わざるを得ません。
企業別労働組合/日本型雇用三種の神器③
日本型雇用三種の神器の3つ目の企業別労働組合とは、ある企業に在籍している従業員だけで結成された労働組合を指します。
日本では労働組合を結成し運営する権利が憲法で保障されています。
また、労働組合が結成され運営されている企業においては、労働組合が従業員の労働条件を代表して交渉します。
世界でみた場合に、同業種での労働組合結成などが一般的です。
例えば、自動車会社ならば自動車会社の労働組合が一つあるといったです。
日本で例えると、トヨタも日産もホンダもマツダなどの自動車業界の従業員すべてが同じ労働組合といった形です。
企業別労働組合は、企業それぞれの問題点を細かく改善させるなどの活動をしやすいといったメリットがあります。
しかし、企業内の問題だけしか理解出来ないなど、閉鎖的になりがちといった問題点が指摘されています。
日本型雇用のメリットとデメリット
日本型雇用で高度経済成長期に著しい成長を遂げたことは間違いありません。
しかし、人口減少が現実のものとなっている現代においてこれから高度経済成長期のような成長は見込めません。
また、人口減少問題と同時にインターネットに代表される技術革新の急速な進展や社会環境の激変が、日本型雇用を大きく変化させています。
同時に従業員自身の働き方への意識も大きく変化しています。
「何よりも仕事が一番に優先」などと言った考え方は古く、「ワークライフバランスを考えた働き方」といった言葉などが見受けられることなどをみても働くことへの意識の変化が理解できます。
日本政府も、残業時間の規制や有給休暇の強制取得など「働き方改革」で労働生産性の向上を目指しています。
つまり、「日本型雇用」は現代の日本で企業にとっても従業員にとってもデメリットが多いのが現状で、大きな変革を推進する時期なのです。
その一つとして雇用の流動性があります。
それでは雇用の流動性から考えるリカレント教育を説明いたします。
雇用の流動性から考えるリカレント教育
日本型雇用の限界としてまずは終身雇用制度があります。
定年まで雇用することのできない企業を退職した労働者を必要とする他企業が、即戦力として採用して雇用の流動性を高めるのです。
どのような従業員であっても他企業で雇用されるためにスキルアップは必須です。そんな中で政府が掲げ注目されているのがリカレント教育です。
また、エンプロイアビリティ(雇用されうる能力)の向上といった観点からもリカレント教育は注目されています。
日本型雇用では、大きく「学び」「労働」「引退」という3つのステージで説明することが出来ます。
しかし、リカレント教育が実施されるこれからは様々なステージ(マルチステージ)が考えられます。
具体的な例として以下のようなものがあります。
- 海外留学/マルチステージの例①
学校を卒業し働きだしてから世界の歴史に興味をもち海外留学に興味を持ち出した。
その為、働きながら社会人として大学に通い歴史を学び、語学教室にも通い、大学卒業後留学する。 - 定年後独立/マルチステージの例②
定年までは工場で会社員として働き、定年後は趣味であるバイクで独立したいと考えていた。
在職中からバイク工学を学び、定年退職後は1年間専門学校に通い、独立する。 - 企業内留学/マルチステージの例③
高卒者のキャリアアップのために、大学と提携して国内留学させる。
学費も企業が負担し、従業員に給料も支払う。
企業が従業員のスキルアップのために行う。 - 資格取得/マルチステージの例④
小さな頃からの夢であった看護師資格取得のために、在職しながら夜間専門学校に入学し資格取得を目指す。
リカレント教育と生涯教育は何が違うのか?
日本において「リカレント教育」の同義語として似ているワードであり混同されやすい「生涯教育」があります。
「生涯教育」も「リカレント教育」も学び続けるという点では同じです。
しかし、「生涯教育」と「リカレント教育」では学び続ける目的が違います。
「生涯教育」は、人生のあらゆる学習において学ぶことを目的としています。
学校教育や社会教育はもちろんで、ボランティア活動や趣味のスポーツや文化活動なども含まれます。
つまり、「生涯教育」は、「生きがい」や「日常の暮らしを豊かにする」ことを目的としています。
「リカレント教育」はその目的がより具体的です。
「リカレント教育」の目的は、働くことにスポットを当てて「仕事に生かすための知識やスキル」を学ぶことです。
例えば、「資格取得」「外国語」などはもちろん、経営や法律、会計、マーケティングなどの「ビジネス系科目」や「プログラミングスキル」など仕事に関係するものが中心なのです。
ただ、海外では「生涯教育」を生涯的に働くことのための学習と捉えている場合があり、日本の「リカレント教育」とほとんど同じです。
つまり、海外では「生涯教育」も「リカレント教育」も同じものと認識されていることも多くありますので海外との比較や海外の方と話をする際には注意が必要です。
日本でリカレント教育が普及しない理由
最近では国会答弁で「リカレント教育」という言葉が使用されており、それがニュースなどで取り上げられることが多くなっているためにリカレント教育という言葉をよく見るようになりました。
しかし、現実問題としてまだまだ日本においては「リカレント教育」は普及しているとは言えません。
このコラムを読まれている方も「リカレント教育て何?」と読まれているのであって、このことからも普及していないことをご理解いただけると思います。
しかし、なぜリカレント教育は普及しないのでしょうか?
それは、上述した日本特有の働き方「日本型雇用」に理由があります。
日本では定年まで働き続けることが一般的でしたので、社内の業務に特化したスキルアップが自身のキャリアアップに繋がりました。
少し言い方を変えれば社内だけで通用するスキルをアップさせれば良かったのです。
また、定年まで働くことが当然ですので途中で学習のために中断するという考えもなく、再開する際の復帰する制度などあるはずもありません。復帰できるかどうかはわからないために学習しようと思う従業員がいるはずもありません。
だからこそ、リカレント教育は普及しないのです。
しかし、繰り返しにはなりますが、人口減少が現実のものとなっている日本においてこれから高度経済成長期のような成長は見込めません。
また、人口減少問題と同時にインターネットに代表される技術革新の急速な進展や社会環境の激変が、日本型雇用を大きく変化させており、従業員自身の働き方への意識も大きく変化しています。
在宅で働くことも一般的になっている現代において、世界の企業と優秀な人材獲得競争しなければなならない日本企業でリカレント教育は必須です。
日本全体としても世界に遅れを取らないために、日本政府はリカレント教育を強く後押しし、諸制度の整備や補助金制度を設けるなどの取り組みをおこなっているのです。
なぜ「リカレント教育」への注目が高まるのか?/理由から考える背景9個
日本国内において「リカレント教育」はまだまだ普及していないのが現状ですが、非常に注目をされています。
しかしなぜ日本国内において「リカレント教育」は注目されているのでしょうか?
また、どうしてリカレント教育は必要なのでしょうか?
理由からリカレント教育が注目され必要とされている背景を考えていきましょう。
技術革新と市場の急速な変化/リカレント教育が注目される理由①
AIなどデジタル分野においての技術革新は急速に進んでいます。
そのために、「はたらくこと」の意味も変化しており、今までの「はたらく」は社会で通用しなくなっており、今までとは違った「はたらく」のために知識やスキルが求められています。
例えば、計算機を使って売上を計算する事はパソコンがしてくれますので売上計算という「はたらく」はなくなります。
しかし、その売上を向上するための方法を考えることが新しい「はたらく」になります。
売上計算のためにパソコンの操作を学んだ後には売上向上のためにはマーケティングなどを学ぶ必要があるのです。
その手段や方法として、学ぶことと働くことを繰り返すリカレント教育が必要になるのです。
雇用の流動化の加速/リカレント教育が注目される理由②
上述したとおり、日本型雇用である定年まで雇用する終身雇用制度は崩壊しています。
従業員は自分のキャリアを考えて働きやすい企業への転職や企業に雇用されない独立や起業への道を選択します。
また、同時に企業も生産性向上のために雇用の流動化が必要だと長年言われてきました。
つまり、働く従業員はもちろんですが、企業側にとっても転職するなどによりスキルアップやキャリアアップを高めていくという価値観の高まりが起こっているのです。
このような要因から、働く従業員が自律的にキャリア形成を重ねてキャリアアップしていく手段としてリカレント教育へ注目が集まっています。
人生100年時代の到来/リカレント教育が注目される理由③
日本人の平均寿命は年々伸びています。
厚生労働省の発表によると、1980年(昭和55年)に男性は73.35才で女性は78.76才でした。
それが2021年(令和3年)には男性は81.47才で女性は87.57才になっています。また、平均寿命はこのまま増加していくことが見込まれています。
従来であれば定年後はのんびりと老後生活を過ごしていくことが出来ました。
しかし、100年生きるとなると生活の糧が必要となることはもちろん、元気なうちは働いて社会に貢献し充実した生活を送りたいと働くことを選択する人も増加してきます。
ただ、上述したように働く上で必要な知識やスキルは大きく変化しており、知識やスキルをいつでも何歳でも身につけることができるように、リカレント教育が重要であり注目されています。
ライフスタイルの変化/リカレント教育が注目される理由④
上記の「人生100年時代の到来」となる現代においてそれはライフスタイルの変化と捉えることも出来ます。
従来は学校(中学、高等学校、大学、専門学校、短期大学等)を卒業後には働くことだけを「単線型」でした。
しかし、これからは働きだしてからも必要であることを学び直すを繰り返す「マルチステージ型」へとライフスタイルが変化してきています。
新しいことを学び直した後にその学んだことを活かした仕事に転職したり、仕事で必要なことを学び直した上で仕事に活用するなどといったことへの転換が始まっています。
新しいことへのチャレンジを認め始めている社会はスタートを切ったばかりなのかもしれません。
そんな社会に必要なことがリカレント教育なのです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)・働き方改革/リカレント教育が注目される理由⑤
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、様々なデータなどをデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善するだけではなく製品に活用したり、サービスにももちろん、ビジネスモデル自体そのものにも変化を促し、企業文化や風土、組織、競争上の優位性を確立することを言います。
そんなDXは、現在様々な場面で推進されており大きな成果を上げています。
しかし、DX技術の進化やトレンドの変化は非常に早く、昨日までの常識が今日は非常識などが一般的になり学び続けなければ時代遅れになってしまいます。
このような問題点を解決するためにも、リカレント教育が必要とされています。
リカレント教育をすることで継続的な学びは技術進化への適応に活用されていくのです。
ただ、DXにおいては従業員自身の取り組みや姿勢も必要ではありますが、従業員よりも企業自体がリカレント教育を支援する必要が重要と言われています。
また、DXは働き方改革にも活用されています。
労働者不足・人材不足の解消/リカレント教育が注目される理由⑥
日本では少子高齢化社会が近づいているのではありません、すでに少子高齢社会になっており、人口は減少しています。
人口減少は生産性人口(15歳から65歳未満の年齢に該当する人口)の減少であり働く人自体が減少しており、労働者不足・人材不足はすでに非常に深刻な社会問題です。
そんな労働者不足・人材不足解消にリカレント教育が注目されています。
出産や育児、介護などで社会で働くころから一旦離れたブランクのある人はもちろん、上記で記した定年後にも働きたいと考えている人などにリカレント教育で学んでもらい、社会復帰してもらい労働者不足・人材不足解消に役立ててもらえます。
また、このような人たちは新入社員のような社会のルールなどの教育は必要なく、即戦力として活躍してくれますのでリカレント教育の有無が重要になります。
競争力の向上/リカレント教育が注目される理由⑦
リカレント教育は競争力も大きく向上させます。
多くの技術や能力をもった従業員にリカレント教育を行えば新しい技術開発はもちろん、新サービスにも活用されます。
新技術や新サービスなどは他企業や他業種との競争力を向上させるとともに、企業としての全体的なレベルの底上げも期待できるのです。
「Society 5.0」の到来/リカレント教育が注目される理由⑧
「Society 5.0」とは、内閣府によると「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」となっています。
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。
「Society 5.0」では、社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります。
つまり、経済発展と社会的課題の解決を両立していく新たな社会であるSociety 5.0の実現を目指しているのです。
Society 5.0で実現する社会
- Society 4.0では知識・情報の共有、連携が不十分
Society 5.0ではIoTですべての人とモノがつながり、新たな価値が生まれる社会 - Society 4.0では必要な情報の探索・分析が負担、リテラシー(活用能力)が必要
Society 5.0ではAIにより、必要な情報が必要なときに提供される社会 - Society 4.0では地域の課題や高齢者のニーズなどに十分対応できない
Society 5.0ではイノベーションにより、さまざまなニーズに対応できる社会 - Society 4.0では年齢や障害などによる、労働や行動範囲の制約
Society 5.0ではロボットや自動走行車といった技術で、人の可能性が広がる社会
このような変化はビジネスとして考えた場合にもチャンスであり、大きな変化に対応するためにも新たな知識や技術は必須ですのでリカレント教育に注目が集まっています。
デジタルディスラプション/リカレント教育が注目される理由⑨
デジタルディスラプションとは、新しいデジタル技術により既存のサービスや商品が淘汰され、高性能であったり、利便性のある新しい製品やサービスに置き換わり、既存企業が市場からの退出を余儀なくされることを言います。
例えば、映画などをレンタルするNetflixがあります。
オンラインで映画などを見ることができるために従来のDVDレンタルは淘汰されつつあります。
他にもフィルムカメラのメーカーです。デジタルカメラやスマートフォンの普及によりフィルムカメラメーカーは淘汰されました。
このようなデジタルディスラプションの影響を受けると言われている業界ではリカレント教育が非常に注目されています。
その代表が自動車業界です。
ガソリンエンジンから電気自動車へと100年に一度の変革期を迎えていると言われているからです。
リカレント教育のメリット/企業側・従業員側で考える
それでは具体的にリカレント教育のメリットはどのようなモノなのでしょうか?
企業側・従業員側双方にメリットがなければリカレント教育の導入には至りません。
ここでは、企業側・従業員側で考えて、それぞれのメリットをポイントを絞ってわかり易く説明いたします。
リカレント教育のメリット:企業側
それではまずはリカレント教育を実施するメリットを企業側にたち説明いたします。
リカレント教育を企業側が実施するメリットは「業務効率の向上」と「人手不足解消」です。
具体的にみていきましょう。
業務効率の向上/リカレント教育のメリット:企業側①
リカレント教育の企業側の大きなメリットとして業務効率の向上があります。
上述したとおり、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進めば生産性の向上が見込めます。
リカレント教育を進めることでデジタルスキルを高まり、より効率的な働き方を進めることが出来ます。
異業種などへの新規事業進出なども考えることも可能になりますので、ビジネスを大きくすることも可能になることもありえます。
デジタルスキルをリカレント教育で実施し、組織としてDX化を進め業務効率の向上を目指しましょう。
人手不足解消/リカレント教育のメリット:企業側②
上記で記した通りリカレント教育は業務効率化向上が見込めます。業務効率化は人手不足の解消にも繋がります。
単純に考えても、今まで複数人でしていた作業もリカレント教育で学んだ技術により1人で実施できるとなれば生産性向上と同時に人手不足解消に役立つことは理解いただけるのではないでしょうか?
リカレント教育で様々なスキルアップを図り、より少ない従業員人数で幅広く業務を行うことが可能になります。
リカレント教育のメリット:従業員側
それではまずはリカレント教育を実施するメリットを従業員側にたち説明いたします。
リカレント教育を従業員側が得られるメリットは「専門性の高い職業への就業」と「年収や就業率の上昇」です。
具体的にみていきましょう。
専門性の高い職業への就業/リカレント教育のメリット:従業員側①
リカレント教育で従業員側が得られるメリットの大きなものとしてはやはり、専門性の高い職業への就業が挙げられます。
学び直すことで技術はもちろん知識に関しても習得スピードは速くなります。このスピードはキャリアップを促進させることにも当然役立ちます。
また、これから更に加速すると言われている社会の変革の中でも活かすことが可能になり「進化のスピードが速い」「専門性の高い業務」にも就業することが可能になると考えられます。
年収や就業率の上昇/リカレント教育のメリット:従業員側②
リカレント教育で従業員側が得られるメリットとしては内閣府調査の「人生100年時代の人材と働き方」に具体例として示されています。
それは、将来的な年収の増加や就業確率の上昇等につながるということです。
内閣府の調査による年収は2年後には約10万円3年後には16万円変化し、就業確率は2年後10%、3年後14%と向上しています。
高度経済成長時代のような給料増加が見込めない現代において大きなアップでありメリットになるのではないでしょうか?
リカレント教育の日本における現状について
それではリカレント教育は日本において現状はどうなっているのでしょうか?
リカレント教育が知られる前の日本型雇用が一般化していた日本では、大学など学校を卒業し就職した後の教育は、企業が社員教育をすることでまかなわれてきました。
しかし、リカレント教育の必要性が認識されてきた現在においては、大学への社会人枠の入学はもちろん、専門職大学院の設置や大学の公開講座などで整備が進んでいます。
また同時に、通信技術の発展により通わなくても良い大学などや一般的な通信教育やカルチャーセンターもあり民間の力で社会人が学ぶ事ができる環境は増加しています。
リカレント教育で学び直すべき課題や領域
リカレント教育で学び直すべき課題は役職により大きく異なります。
新入社員と社長では仕事内容が違うというのを考えればおわかりいただけるのではないでしょうか?
ただ、どの仕事でも同じ課題も存在します。
それが問題解決能力です。
新入社員であっても社長であっても仕事内で問題はあならず発生しますし、問題を解決することが仕事なのだと言っても過言ではありません。
また、デジタル技術の発達により時代の流れはますます早くなっています。
つまり、問題を解決しなければならない時間も短くなっていると言えます。
新入社員など仕事経験が浅いと言われる一般社員ほど、ITやAIを活用した技術や、マーケティングといったスキルを学ぶ必要があります。
また、役員レベルや管理職といわれる人はコミュニケーションやリーダーシップ面などソフト面での能力を学ぶ必要があります。LGBTQやセクシュアルマイノリティ(性的少数者)などの人権問題についても学ぶ必要があります。
同時に異国人とのコミュニケーションのためにも語学スキルも考える必要があります。
そして、最後に役員や管理職として会社の未来を考えるためにも事業構想を1(いち)から考える能力も必要になります。
このようなものを総合的に考えた場合これからの時代は、AIに任せてもよい部分と任せては行けない部分を意識してリカレント教育で学び直す必要があります。
繰り返しにはなりますが計算などはAIなどがしてくれるようになりますので、計算機の入力がどれだけ早くてもさほど役に立つことはありません。
しかし、人の感情を察知する能力などの部分はAIには任せる事ができません。
そういったことを意識しながら、自分の特技や特徴とAIとの違いを意識して能力を磨いていくことが重要です。
国が進める制度としてのリカレント教育
国でもリカレント教育を強く推奨しています。
その中でも代表的なものが文部科学省が進めている「職業実践力育成プログラム」です。
大学などで主に行われている職業に必要な知識や技術を取得できる実践的かつ専門的なプログラムです。
国が250以上の過程を認定しており、社会人の学び直しを推進することを目的として企業の理解促進も図っています。
週末や夜間に開講するなどして社会人に学び直ししやすい環境を整えています。
また、他にも厚生労働省や経済産業省など実施しています。
同時に、都道府県や市町村でも実施しているところもあります。
各行政庁では企業への補助金や助成金などにも力を入れています。
行政の各種制度を利用して、企業として従業員へのリカレント教育実施を強く推進していることからも、リカレント教育の重要性がおわかりいただけるのではないでしょうか?
リカレント教育で活用できる給付金や助成金は次のとおりです。
- 人材開発支援助成金
- 教育訓練給付金
- 高等職業訓練促進給付金
教育訓練給付金は、会社員と言われている多くの方が対象です。
企業が力を入れていなくても従業員自身が活用することが可能です。
学生時代に嫌だった勉強かもしれません。
しかし、学びたいと思ったことを学ぶことは非常に楽しいと感じるはずです。
利用方法も簡単で非常に便利ですので、是非ご自身のキャリアアップに活用をお勧めします。
詳しくはハローワークでお尋ねください。
PICKUPキャリコン
リカレント教育の実施例(企業別)
それでは具体的にリカレント教育を実施している企業を具体例としてみていきましょう。
上述したとおり、リカレント教育に力をいれているのは大手と呼ばれている大企業ばかりにはなりますが、それぞれの企業として抱える課題は企業の大小を超えて同じものもあるはずです。
中小企業の経営者の方にも参考になると同時に、従業員の方も生産性向上により企業の利益向上に貢献し従業員全体の給料アップのために経営者に掛け合うための知識としてお役立てください。
また、この項目では主にイノベーション創出のためのリカレント教育のみを掲載しています。
味の素株式会社/リカレント教育の実施例①
- 事業内容/食品、アミノサイエンス事業
- 本社所在地/東京都中央区
- 設立年/1909年
- 従業員数/単体 3,184名 連結 33,461名(2021年3月31日時点)
味の素株式会社は、「課題解決力を高める能力開発により企業価値を向上」を抱げリカレント教育に力を入れています。
主にDX(デジタルトランスフォーメーション)による業務改善は、中期経営計画を推進するために不可欠であり、デジタル人材の育成に注力しています。
ビジネスDX人財初級・中級・上級と社内資格を社員のITやリテラシーを高める施策として認定しています。
全社員を対象に公募制のコースで希望者が受講し、費用は会社負担となっています。
一人あたりの人財投資を大幅に増加させて、「課題解決能力の向上」「イノベーションの加速」「環境変化への対応力向上」により社員一人あたりの売上高を2019年と比較して2025年は134%の生産性向上を目指しています。
AGC株式会社/リカレント教育の実施例②
- 事業内容/ガラス事業、電子事業、化学品事業、セラミックス事業
- 本社所在地/東京都千代田区
- 設立年/1950年
- 従業員数/55,999名(2021年12月31日時点)
AGC株式会社は、「専門的な業務知識とデータ解析スキルを併せ持つ二刀流人財の育成」を抱げリカレント教育に力を入れています。
データサイエンティスト育成のために、データサイエンスに関するスキルを習得するため「Data Science Plus」プログラム」実施。
入門編、基礎編、応用編と、先端基盤研究所への社内留学からなり、基礎編以降は選抜された社員が段階的に研修を受講する仕組みとなっています。
また、目的に応じて国内のみならず海外の大学とも連携し経営候補人財を中心に博士号取得の支援も実施しています。
SCSK株式会社/リカレント教育の実施例③
- 事業内容/ソフトウェア及び情報通信システムの開発、輸出入、販売、保守、リース等
- 本社所在地/東京都江東区
- 設立年/1969年
- 従業員数/連結 14,550名(2021年3月31日時点)
SCSK株式会社は、「事業戦略と人財投資を整合させ、事業成長の加速を目指す」を抱げリカレント教育に力を入れています。
「2030年 共創ITカンパニー」を目指し、事業革新、DX事業化、人財投資を基本戦略としています。
そのため、従来の受託型のビジネスからお客様との協業によるビジネスへの貢献や独自の事業の創造を目指しています。
専門性を可視化することで客観的な指標に基づき、自律的かつ継続的に成長できる環境を提供するために、専門性認定制度を設け、営業職、技術職の専門能力をITSS等の業界標準をベースに独自のアレンジを加えて15職種・7段階のレベルを認定しています。
専門性認定には、スキルアップや資格取得だけでなく実務の実績が必要となり専門性認定に応じて手当や一時金を支給しています。
なお、専門性認定は人事等級との対応目安は示しているが、必ずしも連動するものではない点も注目すべきです。
また、全社員に継続的な学びと成長の機会を提供する人材育成体系として、「SCSK i-University」も設定されています。
具体的には、5カテゴリ200種類以上の研修プログラムを提供されています。指名により受講するコースもありますが、本人の希望により選択できるコースもあり従業員自身の学びに役立っています。
コニカミノルタ株式会社/リカレント教育の実施例④
- 事業内容/デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア
- 事業/インダストリー事業
- 本社所在地/東京都千代田区
- 設立年/1936年
- 従業員数/単体 4,910名、連結 40,979人(いずれも2021年3月時点)
コニカミノルタ株式会社は、「ビジネス転換のため、プロフェッショナル人財集団への変貌」を抱げリカレント教育に力を入れています。
新中期経営戦略「DX2022」で、「DX as a Service」の実現、DX(デジタルトランスフォーメーション)による高収益ビジネスへの転換を図り、真の社会課題解決企業を目指しているコニカミノルタ株式会社です。
しかし、目標達成のためには、すべての従業員の人的リソースの最大化が必要で、プロフェッショナル人財集団への変貌が求められています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する人財確保に向けて、「スキルチェンジ(Re-skill)」「スキルレベルアップ(Up-skill)」「IoT人財の育成」という3つの施策に取り組んでいます。
併せて、個人や組織の活性化と組織風土改革を促進するために、人事評価も変化させています。
大きな変化としてイノベーション創出やチャレンジ風土醸成のため、組織の枠を超えた有志の集まりである自主サークル活動や、過去に前例のない取組や職務を超えた貢献等のチャレンジを人事評価において加点評価する制度です。
また、将来の会社の経営者を担うCEO・執行役候補及びDXビジネスの拡大&社内DXの推進加速を担うグローバルDXリーダーを選抜して、育成しています。
PICKUPキャリコン
サイボウズ株式会社/リカレント教育の実施例⑤
- 事業内容/グループウェアの開発・販売・運用、チームワーク強化メソッドの開発・販売・提供
- 本社所在地/東京都中央区
- 設立年/1997年
- 従業員数/単体 647名、連結 857名(いずれも2020年12月末時点)
サイボウズ株式会社は、「働き方、人事異動、学び、副業など全てにおいて社員の主体性を尊重」を抱げリカレント教育に力を入れています。
従業員は自分の将来のキャリアを自分で考えて、自律的に行動します。
また、自らのキャリアのために必要な内容を従業員は学び、会社はそうした学びを支援する形をとっています。
「理想への共感」「多様な個性を重視」「公明正大」「自立と議論」という4つの文化を元に、「チームワークあふれる社会を創る」という「存在意義の実現」を目指しています。
業務時間外への自己啓発への金銭的支援も、業務との関連性等の観点から個別に検討はされますが可能です。
また、キャリアに関する迷いや悩みを国家資格キャリアコンサルタントの社員もいるので相談が可能です。
コラム関連で活躍中の国家資格キャリアコンサルタント
株式会社メルカリ/リカレント教育の実施例⑥
- 事業内容/フリマアプリ「メルカリ」の企画・開発・運用
- 本社所在地/東京都港区
- 設立年/2013年
- 従業員数/1,891名(2021年12月時点)
株式会社メルカリは、「イノベーション促進や競争力向上を目指し、博士課程進学を支援」を抱げリカレント教育に力を入れています。
「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」というバリューを共有して、急速に組織規模が拡大するなかであっても、組織としても個人としてもバリューを発揮できるようにするための各種制度を導入しています。
また、働く場所や出社の有無など社員が自由に選択できる制度を導入しています。
これにより多様な人材が活躍できる環境の実現を目指しています。
また、新卒採用であっても、これまでの実績等をもとにして中途採用と同様に即戦力の人材を採用しています。
メルカリとしての企業のミッション達成に向けて有益で、今後の経済発展や社会的課題の解決につながるものであれば、理系だけでなく人文系や社会学系も想定して、研究テーマは問わずに博士課程への進学を支援する制度を導入しています。
リカレント教育関連書籍一覧
- 大前研一 稼ぐ力をつける「リカレント教育」―誰にも頼れない時代に就職してから学び直すべき4つの力/大前研一
- 定年後にもう一度大学生になる 一日中学んで暮らしたい人のための「第二の人生」最高の楽しみ方/瀧本哲哉
- 科学立国のための大学教育改革-エビデンスに基づく科学教育の実践/カール・ワイマン
- リカレント教育とその質保証(専門職教育質保証シリーズ)/川口昭彦・江島夏実
- 月刊先端教育2022年3月号-人生100年時代 産業界で求められるリスキルとリカレント-/学校法人先端教育機構
リカレント教育関連サイト一覧
- リカレント教育とは?人生100年時代を生きるための「学び直し」の重要性/KOKUYO
- リカレント教育/厚生労働省
- 「学び」に遅すぎはない!社会人の学び直し「リカレント教育」/政府広報オンライン
- リカレント教育とは?【意味を簡単に】学び直し、補助金/kaonabi
- リカレント教育とは?学び直しが注目される背景と企業に求められること/PERSOL
リカレント教育とは?わかりやすく簡単に理解/プログラム専門事業で人材支援のまとめ
いかがだったでしょうか?
リカレント教育とは?わかりやすく簡単に理解/プログラム専門事業で人材支援でした。
従業員の方は、人生を楽しむためにもリカレント教育の活用を!
経営者の方は、会社発展のためにもリカレント教育の活用を!
本文内でもお伝えしましたが「人生100年時代」です。
「人生100年時代」にリカレント教育を活用してよりよい人生を歩んでみてはいかがでしょう?従業員の方も経営者の方もリカレント教育に興味をもっていただけたのならば幸いです。