[最終更新日]2022/07/20
社会人になってから上司や先輩から「損益計算書も知らないのか!」なんて言われた事がある人も多いはずです。
そんな「社会人になってから知っておいて方が良かった」と思われる損益計算書を初心者向けにわかりやすく説明いたします。
Contents
損益計算書(PL)は財務諸表の一つ
損益計算書は財務諸表の一つです。
財務諸表は、企業が一定期間、一定時点の経営成績や経営状態を示すために作成します。現貯金や資産や売り上げや費用などの財務状況等を株主や債権者などの関係者に対して示すためです。
一般的には財務諸表のことを決算書(決算報告書)と呼ばれています。
日本における会計基準では、財務諸表には「貸借対照表(Balance sheet、略称B/S)」「損益計算書(Profit and Loss Statement、略称P/L)」「キャッシュ・フロー計算書(C/F、cash flow statement)」「株主資本等変動計算書(S/S、Statements of Shareholders’ Equity)」が含まれます。
貸借対照表(balance sheet、略称B/S)
貸借対照表(Balance sheet、略称B/S)は、企業の一定時点(決算日/例:3月31日)の財政状態を表している書類です。
貸借対照表は、左側の「資産の部」と右側の「負債の部」と「純資産の部」に分けられます。
左側の「資産の部」には、どのようにお金を使ったのか、お金の使い方が書かれています。
右側の「負債の部」と「純資産の部」には、左側の資産を得る為にどのように資金を集めたのかが書かれています。
>>【初心者向け】貸借対照表・バランスシート(BS/balance-sheet)とは
キャッシュ・フロー計算書(cash flow statement、略称C/F)
キャッシュ・フロー計算書(C/F、cash flow statement)は、企業の一定期間(例/4月~3月)の現貯金等(現金同等物も含まれる)の増減を表す数値を記しています。
キャッシュ・フロー計算書は、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに分けて表します。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の損益に関する取引の資金の動きを表します。
投資活動によるキャッシュ・フロー
営業活動以外での資産に関する資金の動きを表します。固定資産・株・債権などの取得や売却をした時の流れを表しています。
財務活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フロー以外での負債と純資産の部に関する資金の動きを表します。
>>【初心者向け】キャッシュ・フロー計算書(cash flow statement)
株主資本等変動計算書(S/S、Statements of Shareholders’ Equity)とは、貸借対照表の純資産の企業の一定期間(例/4月~3月)における変動額のうち、株主資本の各項目の変動事由を報告するために作成されます。
株主資本等変動計算書は、純資産を株主資本、評価・換算差額、新株予約権、非支配株主持分(連結株主資本等変動計算書においてのみ作成)に分けて表します。
損益計算書-Profit and Loss Statement(PL)-とは?
損益計算書(PL)とは、企業のある一定期間(例:4/1~3/31)の収益と費用の損益計算をまとめた書類です。
貸借対照表は一定時点(例:3月31日)に対して、損益計算書の期間(例:4月~3月)という「期間」と「時点」という点が違います。
損益計算書に記載されている構成要素は、大きく分けて「収益」「費用」「利益」の3つです。
もっとわかりやすく説明しますとある企業が一定期間に
- 収益:どれくらいの売上がある
- 費用:どれくらいの費用を使った
- 利益:どれくらいの利益が残った
がわかる書類です。
■会計計算規則での損益計算書について
会社計算規則 (平成十八年法務省令第十三号)第143条には以下のように定められています。
第143条 損益計算書の要旨は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
- 売上高
- 売上原価
- 売上総利益金額又は売上総損失金額
- 販売費及び一般管理費
- 営業外収益
- 営業外費用
- 特別利益
- 特別損失
このページでは以上の項目について説明いたします。
損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)との関係は?
貸借対照表は「一定時点」の企業の資産や負債、資産状況を把握するために用いられるのに対して、損益計算書は「一定期間」の企業の財務の状況を表しています。
貸借対照表は、資産=負債+純資産という式で構成されています。
企業の資産を保有する為に、他者から調達したのか(負債)自分で調達したのか(純資産)ということです。
損益計算書と貸借対照表を同時に見ることにより、どちらか一つを見るよりもその企業を深く理解することが出来ます。
経営状況を把握するために役立ちます。
損益計算書の利益が上がれば、貸借対照表の資産が計上されるなどする為、損益計算書と貸借対照表は強い関係にあります。
損益計算書は「経常損益の部」「特別損益の部」に分類
損益計算書は「経常損益の部」「特別損益の部」に分類されます。
損益計算書の「経常損益の部」
「経常損益の部」に属する収益およひ費用の性質は、日常性ないし反復性を伴ったものです。一般的な企業の活動をして考えられる費用はこちらに分類されます。
つまり、企業の一般的な営業活動から経常的に生じる収益と費用(例えば文房具屋の場合鉛筆を仕入れて、販売などして通常の営業活動で生じた利益と費用)、そしてその成果(利益)を表示されます。
経常損益の部は、さらに以下の2つの部に分けることができます。
- 営業損益の部/会社の本業に係わる営業活動の努力と成果を表示しています。
例:上記内で示した通り、文房具屋の鉛筆の売買に関するモノ - 営業外損益の部/会社の本業に付随する営業活動の努力を表示しています。
例:文房具屋の店前に置いてある自動販売機の仕入れ、売上などに関するモノ
なお、会社計算規則 第143条では1~6の部分です。
損益計算書の「特別損益の部」
「特別損益の部」は、経常損益の部のように企業に非経常的で、営業活動に無関係で生じた収益と費用を表示しています。
例えば、会社が保有している他社の株式売買利益などが特別利益に分類されます。また、損失が出た場合には特別損失に分類されます。
なお、会社計算規則 第143条では7と8の部分です。
損益計算書の「売上高」
「売上高」とは、その企業の本業で稼いだ収益のことを言います。
本業は定款で示している業務のことを言います。文房具屋さんが文房具を売って得た売上のことを言います。
株式投資を目的としている企業(投資ファンド等)の場合を除いて株の配当金などはここには含まれません。
また、株の売買益も同様です。もし、IT企業株の急激に高騰した際の売却益が本業の売上よりも多くなったとしても売上高には含まれません。
損益計算書の「売上原価」
「売上原価」とは、「売上高」の収益を得る為に対応する費用です。
例えば、文房具屋さんが鉛筆を仕入れた費用のことを言います。製造業の場合は原材料費のことです。
損益計算書の「売上総利益金額又は売上総損失金額」
「売上総利益金額又は売上総損失金額」は「売上高」から「売上原価」を引いて計算します。
「売上総利益金額又は売上総損失金額」は、「粗利益」とも呼ばれていて、「あらり」と略して使用されている場合も多くあります。
損益計算書の「販売費及び一般管理費」
「販売費及び一般管理費」は、上記の営業活動をする上でかかった費用のことを言います。
文房具屋さんや製造業も同じで人を雇った人件費などのことです。他にも輸送費用や電話料金なども含まれその営業活動の全般的な費用です。
企業の営業活動に要する費用のうち、売上原価に該当するものを除いた総称のことで、「営業費」とも言われています。
「販売費及び一般管理費」は他に以下のような項目があります。
- 給料/従業員に支払われる給料
- 賞与/ボーナス
- 法定福利費/厚生年金などの会社負担分
- 福利厚生費/社員旅行やお茶代など
- 広告宣伝費/広告代
- 接待交際費/取引先との会議費用など
- 旅費交通費/交通費・出張の宿泊代
- 支払手数料/銀行振込手数料など
- 賃借料/事務所の賃貸料
- 通信費/固定電話や携帯電話・インターネットプロバイダ費用
- 水道光熱/水道・電気・ガス
- 保険料/自動車保険や火災保険など
- 減価償却費/資産の価値減少分
- 租税公課/自動車税・固定資産税
- 消耗品費/鉛筆・ボールペン代など
損益計算書の「営業外収益」
「営業外収益」とは、その名の通り企業の本業以外での収益のことを言います。
具体的な「営業外収益」は、株式の配当金などである「受取配当金」や預貯金や貸付金の利子である「受取利息」などです。余剰金を使用して投資を行って利益を得ている場合なども含まれます。
他には、仕入割引や持分法による投資利益などの金融上の収益、(流動資産の)有価証券売却益、不動産賃貸収入などです。
損益計算書の「営業外費用」
「営業外費用」とは、その名の通り営業外での費用のことを言います。
具体的な「営業外費用」は、借り入れをしている際の支払い利息や社債の利息などです。
また、社債を発行する時の費用や所有株式の評価損や売却損が出た際の費用も含まれます。
損益計算書の「特別利益」
「特別利益」とは、会社の通常の活動では発生しないようなその期だけの特別な要因で発生した利益のことを言います。
具体的には所有不動産を売却した際の利益や債務免除による債務免除益などを言います。
ただ、何が特別利益に該当するかの判断基準は一律にないため、計上する際には臨時性や金額の大きさなどを個別に検討する必要があります。
「特別利益」の具体例は以下のとおりです。
- 固定資産売却益
- 投資有価証券売却益
- 子会社株式売却益
- 関連会社株式売却益
- 償却債権取立益
- 貸倒引当金戻入益
- 社債償還益
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損益計算書の「特別損失」
「特別損失」とは、会社の通常の活動では発生しないようなその期だけの特別な要因で発生した損失のことを言います。
「特別損失」も「特別利益」と同様で、何が特別損失に該当するかの判断基準は一律にないため、計上する際には臨時性や金額の大きさなどを個別に検討する必要があります。
「特別損失」の具体例は以下のとおりです。
- 不動産等の固定資産売却損や固定資産除去損
- 長期間保有している株式や証券売却による売却損
- 火災や自然災害、盗難などによる損失
- 前期の損益を修正することで発生した前期損益修正損
損益計算書のチェックポイント
各項目の理解が進んだところで、実際には損益計算書をチェックするポイントはどこなのでしょうか?
まずは単純に一定の期間に利益が出ているのかどうかという点が重要です。ただ、利益も下記の点に注意しなければなりません。
損益計算書の「営業利益/損失」
「営業利益/損失」とは、「売上高」から「売上原価」と「販売費および一般管理費」を引いた数字がプラスであれば営業利益、マイナスであれば営業損失になります。
本業でどれだけ儲けたかの数字です。
「売上総利益金額又は売上総損失金額」から「販売費および一般管理費」を引いた数字でも同じ数字なります。
損益計算書の「経常利益/損失」
「経常利益/損失」とは、「営業利益/損失」に「営業外収益」を足して「営業外費用」を引いた数字でプラスであれば「経常利益」、マイナスであれば「経常損失」になります。
企業の通常の活動で儲けたかの数字です。
営業利益で経常損失の場合もありますし、営業損失で経常利益の場合もあります。
具体的な例では、営業利益で経常損失の場合は本業では利益が出たけど、支払利息が多かった場合、営業損失で経常利益の場合は本業は損失で、株の配当が予想以上にあり経常利益が出た場合などがあります。
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損益計算書の「税引前当期純利益/純損失」
「税引前当期純利益/純損失」とは、「経常利益/損失」に「特別利益」を足して、「特別損失」を引いた数字でプラスであれば「税引前当期純利益」マイナスであれば「税引前当期純損失」になります。
「特別利益」「特別損失」はこの期だけに計上される数字ですので、計上されない場合もあります。その場合には、「税引前当期純利益/純損失」と「経常利益/損失」は同じになります。
損益計算書の「純利益」
「純利益」は、「税引前当期純利益/純損失」から法人税等の各種税金を引いた数字です。
この期の最終的な利益で「当期純利益」「最終利益」とも言われています。
損益計算書のチェックポイントのまとめ
損益計算書で一番重要なのは「営業利益」かどうかです。
なぜなら、企業の通常活動で利益があげられているかどうかを表す指標だからです。
「純利益」が計上されていても、営業損失の場合には事業の抜本的な見直しや資金計画の見直しが必要な場合が考えられます。
損益計算書の関連サイト
- 損益計算書とは? 項目別の見方やチェックポイント、活用法を解説/freee
- 損益計算書/Wikipedia
- 「損益計算書」と「貸借対照表」/野村ホールディングス
- 損益計算書(P/L)とは?見方を事例とともにわかりやすく解説/マネーフォワード クラウド会計
- 損益計算書(PL)の見方とは?5つの利益の読み解き方/三井住友カード
損益計算書のまとめ
いかがだったでしょうか?
損益計算書は、ある一定期間の企業の収益と費用を示す書類で企業の成績表とも言われています。
自社や関係会社の損益計算書であっても、数字を見ることで経営状況を客観的に把握することが出来ます。
経営者目線のリスクや課題を発見し、改善することも可能です。
損益計算書など財務諸表は、一見難しいと思われがちです。
しかし、ポイントを押さえてしまえば、比較的容易に読み解くことが可能ですので、今回ご紹介したポイントを参考にして、ぜひ損益計算書に目を通してみてください。