[最終更新日]2021/09/14
我が国が目指す「派遣労働者の同一労働同一賃金」は、派遣先に雇用される通常の労働者(無期雇用フルタイム労働者)と派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消すること等を目指すものです。
その為、2020年4月1日から、改正労働者派遣法が施行されます。
改正により、派遣労働者は公正な待遇が確保され同一労働同一賃金の実現に向けて大きく下記3点について整備強化されます。
- 不合理な待遇さをなくすための規定の整備
- 派遣労働者の待遇に関する説明義務の強化
- 裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の規定の整備
それでは改正労働者派遣法の整備強化3点についてわかりやすく説明いたします。
Contents
不合理な待遇さをなくすための規定の整備
不合理な待遇差を解消するため、派遣先均等・均衡方式もしくは労使協定方式のいずれかの方式により、派遣労働
者の待遇を確保することを義務化します。
また、2020年4月1日をまたぐ労働者派遣契約も同日から適用されますので、事前に手続きを進めなければなりません。
派遣先均等・均衡方式
派遣先の通常の労働者(無期雇用フルタイム)との均等・均衡待遇
派遣先は比較対象労働者の待遇情報を派遣元に提供します。「均衡待遇」を確保しつつ、派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験その他の就業の実態に関する事項を勘案して賃金を決定する努力義務があります。
均等待遇による派遣元の義務
① 職務内容(業務の内容+責任の程度) 、②職務内容・配置の変更範囲(職務内容・配置の変更範囲とは、人材活用の仕組みや運用等)が同じ場合には差別的取扱いを禁止
均衡待遇による派遣元の義務
① 職務内容(業務の内容+責任の程度) 、②職務内容・配置の変更範囲(職務内容・配置の変更範囲とは、人材活用の仕組みや運用等)、③その他の事情の相違を考慮して不合理な待遇差を禁止
※派遣元で採用している待遇決定方法、派遣元のHPなどで確認出来るうになります。わからない場合は派遣元にお尋ねください。
■職務の内容等を勘案した賃金の決定 (努力義務)
派遣元事業主は、派遣先に雇用される通常の労働者(無期雇用フルタイム)との均衡を考慮しつつ、その雇用する派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案して賃金(※)決定するように努めなければなりません。
(※)職務の内容に密接に関連して支払われる賃金以外の賃金(例えば、通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当)を除く。
労使協定方式
一定の要件を満たす労使協定による待遇
過半数労働組合又は過半数代表者(過半数労働組合がない場合に限ります)と派遣元事業主との間で一定の事項を定めた労使協定を書面で締結し、労使協定で定めた事項を遵守しているときは、一部の待遇を除き(※)、この労使協定に基づき待遇が決定されることとなります。
ただし、労使協定が適切な内容で定められていない場合や労使協定で定めた事項を遵守していない場合には、労使協定方式は適用されず、派遣先均等・均衡方式が適用されます。
※次の①及び②の待遇については、労使協定方式による場合であっても、労使協定の対象とはならないため、派遣元事業主は、派遣先の通常の労働者との均等・均衡を確保する必要があります。
① 派遣先が、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者に対して、業務の遂行に必要な能力を付与するために実施する教育訓練(法第40条第2項の教育訓練)
② 派遣先が、派遣先の労働者に対して利用の機会を与える給食施設、休憩室及び更衣室(法第40条第3項の福利厚生施設)
労使協定に定める事項
- 協定の対象となる派遣労働者の範囲
- 賃金決定方法(同種業務の一般労働者の平均的な賃金額以上、職務の内容等が向上した場合に改善)
- 職務の内容などを公正に評価して賃金を決定すること
- 賃金以外の待遇決定方法(派遣元の通常の労働者(派遣労働者除く)との間で不合理な相違がない)
- 段階的・体系的な教育訓練を実施すること
- 有効期間 など
注意事項
協定を書面で締結していない場合、協定に必要な事項が定められていない場合、協定で定めた事項を遵守していない場合、過半数代表者が適切に選出されていない場合には、労使協定方式は適用されず、派遣先均等・均衡方式が適用されます。
派遣先が実施する業務に必要な教育訓練や利用機会を与える食堂・休憩室・更衣室については、派遣先の通常の労働者との均等・均衡が確保されます。
職務内容に密接に関連する「安全管理に関する措置・給付」は、派遣先の通常の労働者との間で不合理な相違などが生じないことが望ましいとされています。
- 派遣元から関係者への待遇決定方式の情報提供
派遣元事業主は、派遣労働者の数、派遣先の数、いわゆるマージン率、教育訓練に関する事項等に加えて、次の事項に関し、関係者(派遣労働者、派遣先等)に情報提供しなければなりません。 - 派遣先から派遣元への 比較対象労働者の待遇情報の提供
待遇決定方式が派遣先均等・均衡方式、労使協定方式のいずれの場合も、派遣先は、労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ、派遣元事業主に対し、派遣労働者が従事する業務ごとに、比較対象労働者の賃金等の待遇に関する情報を提供しなければなりません。
派遣元事業主は、派遣先から情報提供がないときは、派遣先との間で労働者派遣契約を締結してはいけません。
・比較対象労働者とは
派遣先が次の①~⑥の優先順位により「比較対象労働者」を選定します。
① 「職務の内容」と「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
② 「職務の内容」が同じ通常の労働者
③ 「業務の内容」又は「責任の程度」が同じ通常の労働者
④ 「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
⑤ ①~④に相当するパート・有期雇用労働者(短時間・有期雇用労働法等に基づき、派遣先の通常の労働者との間で均衡待遇が確保されていることが必要)
⑥ 派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者
・提供する「待遇に関する情報」とは
■派遣先均等・均衡方式の場合、派遣先は、次の①~⑤の情報を提供します。
① 比較対象労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲並びに雇用形態
② 比較対象労働者を選定した理由
③ 比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含む。)
④ 比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質及び当該待遇を行う目的
⑤ 比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定するに当たって考慮した事項
■労使協定方式の場合
派遣先は、次の①・②の情報を提供します。
① 派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者に対して、業務の遂行に必
要な能力を付与するために実施する教育訓練(法第40条第2項の教育訓練)
② 給食施設、休憩室、更衣室(法第40条第3項の福利厚生施設)
派遣労働者の待遇に関する説明義務の強化
派遣元に対し、雇入れ時・派遣時に次の事項を明示・説明する義務が課されます。
- 労働条件に関する事項の明示(昇給・退職手当・賞与の有無など)
- 「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」により不合理な待遇差を解消
する旨の説明など
また、派遣元に対し、派遣労働者の求めに応じて、派遣労働者と比較対象労働者との間の待遇の相違の内容・理由、「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」による待遇決定に当たって考慮した事項などを説明する義務が課されます。
派遣先から派遣元への比較対象労働者の待遇等に関する情報
労働者派遣契約を締結する前に、あらかじめ、派遣元に対し、比較対象労働者の待遇などに関する情報を提供しなければなりません。
【注意事項】 情報提供をせず、派遣元との間で労働者派遣契約を締結することはできません。
- 比較対象労働者の待遇情報の提供(書面の交付、FAX、電子メール等)
注意:書面の写しを派遣終了日から3年間保存してください。■比較対象労働者の選定
次の①~⑥の優先順位により「比較対象労働者」を選定します。労使協定方式の場合、比較対象労働者の選定は不要
①「職務内容」と「職務内容及び配置の変更範囲」が同じ通常の労働者
②「職務内容」が同じ通常の労働者
③「業務内容」または「責任の程度」が同じ通常の労働者
④「職務内容及び配置の変更範囲」が同じ通常の労働者
⑤①~④に相当するパート・有期雇用労働者
(短時間・有期雇用労働法等に基づき、派遣先の通常の労働者との間で均衡待遇が確保されていることが必要)
⑥派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者 (派遣先の通常の労働者との間で適切な待遇が確保されていることが必要)■提供する「待遇に関する情報」とは
待遇決定方式別に次の情報を提供します。
【派遣先均等・均衡方式】の場合 → 比較対象労働者に関する次の事項
① 職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲並びに雇用形態
② 選定理由
③ 待遇の内容(昇給、賞与などの主な待遇がない場合には、その旨を含む)
④ 待遇の性質及び目的
⑤ 待遇決定に当たって考慮事項
【労使協定方式】の場合
① 業務に必要な能力を付与するための教育訓練
② 食堂、休憩室、更衣室の利用
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教育訓練の実施・福利厚生施設の利用機会の付与・情報提供
- 教育訓練
派遣先は、派遣先の労働者に対して業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を実施する場合に、派遣元事業主から求めがあったときは、派遣元事業主が実施可能な場合等を除き、派遣労働者に対してもこれを実施する等必要な措置を講じなければなりません。 - 福利厚生施設
派遣先は、派遣先が設置・運営し、派遣先の労働者が通常利用している物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設等の施設の利用に関する便宜の供与の措置を講ずるよう配慮しなければなりません。 - 情報提供
派遣先は、段階的・体系的な教育訓練、派遣先均等・均衡方式又は労使協定方式による待遇決定及び派遣労働者に対する待遇に関する事項等の説明が適切に講じられるようにするため、派遣元事業主の求めがあったときは、派遣先に雇用される労働者に関する情報、派遣労働者の業務の遂行の状況その他の情報であって必要なものを提供する等必要な協力をするよう配慮しなければなりません。
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裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備
派遣労働者と派遣元または派遣先との間で、次の事項に関してトラブルとなった場合には、「都道府県労働局長による助言・指導・勧告」や「紛争調整委員会による調停」を求めることができます。この制度は無料で利用することができ、調停等の内容が公にされないため、プライバシーが保護されます。また、これらを求めたことを理由として、派遣元及び派遣先は派遣労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこととされています。
派遣元が講ずべき措置
- 派遣先の通常の労働者との不合理な待遇差、差別的取扱いの禁止
- 労使協定に基づく待遇の決定
- 雇入れ時・派遣時の明示・説明
- 派遣労働者の求めに応じた説明と説明を求めたことによる不利益取扱いの禁止
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派遣先が講ずべき措置
- 業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の実施
- 食堂、休憩室、更衣室の利用の機会の付与
参照:厚生労働省/派遣先の皆様へ
改正内容の詳細をまとめたパンフレット、不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアルなど厚生労働省HP /派遣労働者の同一労働同一賃金についてをご確認下さい。
労働者派遣法改正の詳細は、都道府県労働局にお問い合わせください。
(お問い合わせ時間 平日 8:30~17:15)
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