ワーキングキャピタルの基礎から応用まで/成功事例と失敗事例から学ぶ資金管理のコツ | キャリアコンサルタントドットネット

ワーキングキャピタルの基礎から応用まで/成功事例と失敗事例から学ぶ資金管理のコツ

[記事公開日]2023/06/23
[最終更新日]2023/06/25
ワーキングキャピタルの基礎から応用まで/成功事例と失敗事例から学ぶ資金管理のコツ

ワーキングキャピタルとは、通常のビジネスを回していくために必要な資金のことです。

売掛金や在庫、買掛金などの流動資産と流動負債の差額で表されます。

ワーキングキャピタルの管理は、企業の資金繰りや企業価値に大きな影響を与える重要なテーマです。

ここでは、ワーキングキャピタルの基礎から応用までをわかりやすく解説します。

また、成功事例と失敗事例から学ぶ資金管理のコツも紹介します。

ワーキングキャピタルの計算方法や分析方法、改善策や最適化手法などを具体的に示します。

これは、経営者や経理担当者、M&A担当者、コンサルタントなど、ワーキングキャピタルに関心のある方々に向けて書かれています。

しかし、ワーキングキャピタルは、ビジネスの基本であり、すべてのビジネスパーソンが知っておくべき知識です。

このページを読んで、ワーキングキャピタルの理解を深め、ビジネスに活かしていただければ幸いです。

 

Contents

第1章 ワーキングキャピタルとは?

第1章 ワーキングキャピタルとは?ビジネスを行うには、さまざまな資金が必要です。

しかし、日々の営業活動にも資金が必要です。

この資金のことをワーキングキャピタルと呼びます。

 

ワーキングキャピタルの定義と計算方法

ワーキングキャピタルは、財務諸表上では流動資産と流動負債の差額で表されます。

流動資産とは、現金や預金、売掛金や在庫など、1年以内に現金化できる資産のことです。

流動負債とは、短期借入金や買掛金、未払金など、1年以内に支払わなければならない負債のことです。

ワーキングキャピタル=流動資産-流動負債

計算例を見てみましょう。

以下はある企業の抜粋した貸借対照表です。

【ある企業の貸借対照表】

資産 額(百万円) 負債 額(百万円)
流動資産   流動負債  
現預金 100 短期借入金 50
売掛金 200 買掛金 100
在庫 150 未払金 50
その他流動資産 50 その他流動負債 100
流動資産合計 500 流動負債合計 300

この企業のワーキングキャピタルは以下のように計算できます。

ワーキングキャピタル=500-300 =200(百万円)

この企業は、ワーキングキャピタルが正の値となっています。

これは、営業活動に必要な資金が自己資本や長期借入金などから賄われていることを意味します。

 

ワーキングキャピタルの重要性と影響

ワーキングキャピタルは、企業の資金繰りや企業価値に大きな影響を与える重要な指標です。

ワーキングキャピタルが増えるということは、現預金が減っているか、借入金が増えているかのどちらかであり、これは企業にとって不利な状況です。

逆に、ワーキングキャピタルが減るということは、現預金が増えているか、借入金が減っているかのどちらかであり、これは企業にとって有利な状況です。

したがって、ワーキングキャピタルを適切に管理することは、企業の健全性や収益性を高めるために欠かせません。

 

ワーキングキャピタルの分析方法

ワーキングキャピタルの分析方法としては、以下のようなものがあります。

ワーキングキャピタル比率:流動資産を流動負債で割ったもので、流動性の高さを示す指標です。

一般に、1以上であれば安全とされますが、業種や企業によって適正な水準は異なります。

  • 売上高回転率:売上高を流動資産で割ったもので、流動資産の効率的な活用度を示す指標です。高いほど良いとされますが、業種や企業によって適正な水準は異なります。
  • 売掛金回収期間:売掛金を1日あたりの売上高で割ったもので、売掛金を回収するまでにかかる平均日数を示す指標です。短いほど良いとされますが、業種や企業によって適正な水準は異なります。
  • 在庫回転期間:在庫を1日あたりの売上原価で割ったもので、在庫を販売するまでにかかる平均日数を示す指標です。短いほど良いとされますが、業種や企業によって適正な水準は異なります。
  • 買掛金支払期間:買掛金を1日あたりの仕入原価で割ったもので、買掛金を支払うまでにかかる平均日数を示す指標です。長いほど良いとされますが、業種や企業によって適正な水準は異なります。

これらの指標を用いて、ワーキングキャピタルの水準や変動要因を分析することができます。

また、これらの指標を改善することで、ワーキングキャピタルを減らすことができます。

 

第2章 ワーキングキャピタルの分析と改善

第2章 ワーキングキャピタルの分析と改善前章では、ワーキングキャピタルの定義と計算方法について説明しました。

ワーキングキャピタルは、企業が日々の事業活動を行うために必要な資金のことでした。

この章では、ワーキングキャピタルの分析と改善について具体的に見ていきます。

ワーキングキャピタルは、企業の資金繰りや企業価値に大きな影響を与える重要な指標です。

適切に管理することで、企業の健全性や収益性を高めることができます。

 

ワーキングキャピタルの分析

ワーキングキャピタルの分析には、以下のような方法があります。

  • ワーキングキャピタル比率:流動資産を流動負債で割ったもので、流動性の高さを示す指標です。一般に、1以上であれば安全とされますが、業種や企業によって適正な水準は異なります。
  • 売上高回転率:売上高を流動資産で割ったもので、流動資産の効率的な活用度を示す指標です。高いほど良いとされますが、業種や企業によって適正な水準は異なります。
  • 売掛金回収期間:売掛金を1日あたりの売上高で割ったもので、売掛金を回収するまでにかかる平均日数を示す指標です。短いほど良いとされますが、業種や企業によって適正な水準は異なります。
  • 在庫回転期間:在庫を1日あたりの売上原価で割ったもので、在庫を販売するまでにかかる平均日数を示す指標です。短いほど良いとされますが、業種や企業によって適正な水準は異なります。
  • 買掛金支払期間:買掛金を1日あたりの仕入原価で割ったもので、買掛金を支払うまでにかかる平均日数を示す指標です。長いほど良いとされますが、業種や企業によって適正な水準は異なります。

これらの指標を用いて、ワーキングキャピタルの水準や変動要因を分析することができます。

また、これらの指標を改善することで、ワーキングキャピタルを減らすことができます。

 

ワーキングキャピタルの改善

ワーキングキャピタルを改善するためには、前章でも述べたように、「売上債権」「棚卸資産」「仕入債務」の3要素がカギになります。

  • 売上債権を減らす:売掛金や受取手形を減らすことで、現金化サイクルを短縮し、運転資本を小さくできます。取引先との支払条件の見直しや、売掛金の回収管理の徹底、ファクタリングの活用などが有効です。
  • 棚卸資産を減らす:在庫を減らすことで、資金の固定化を防ぎ、運転資本を小さくできます。在庫管理の改善や、需要予測の精度向上、JIT方式の導入などが有効です。
  • 仕入債務を増やす:仕入債務を増やすことで、支払いサイクルを延長し、運転資本を小さくできます。取引先との支払条件の見直しや、納品後払いの交渉などが有効です。

これらの改善策は、単に運転資本を減らすだけでなく、キャッシュフローも改善する効果があります。

キャッシュフローが改善すれば、借入金や利息負担も減らせるため、企業価値も高まります。

 

ワーキングキャピタルサイクルとキャッシュコンバージョンサイクル

ワーキングキャピタルの管理において、重要な指標のひとつがワーキングキャピタルサイクルです。

ワーキングキャピタルサイクルとは、原材料や商品を仕入れてから売上金を回収するまでの期間のことで、以下の図のように表されます。

ワーキングキャピタルサイクルは、以下の3つの要素に分解できます。

  • 売上債権回転期間:売上が発生してから売掛金が回収されるまでの期間
  • 棚卸資産回転期間:在庫が仕入れられてから売上が発生するまでの期間
  • 仕入債務回転期間:仕入れが発生してから買掛金が支払われるまでの期間

ワーキングキャピタルサイクルは、これらの要素の合計から仕入債務回転期間を引いたものに等しくなります。

すなわち、

ワーキングキャピタルサイクル=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間

となります。

ワーキングキャピタルサイクルは、事業活動に必要な資金(運転資金)をどれだけ効率的に運用できているかを示す指標です。

ワーキングキャピタルサイクルが短いほど、運転資金が少なくて済み、資金繰りが良好であることを意味します。

逆に、ワーキングキャピタルサイクルが長いほど、運転資金が多く必要であり、資金繰りが悪化する可能性があります。

ワーキングキャピタルサイクルを短くするためには、売上債権回転期間や棚卸資産回転期間を短縮するか、仕入債務回転期間を延長する必要があります。

具体的には、以下のような方法が考えられます。

 

売上債権回転期間を短縮する方法

  • クレジットカードや電子マネーなどの即時決済を促進する
  • 売掛金の支払い条件を厳しくする
  • 売掛金の回収管理を徹底する

 

棚卸資産回転期間を短縮する方法

  • 需要予測や販売動向の分析を行う
  • 在庫の最適化や調整を行う
  • 在庫のライフサイクルを長くする

 

仕入債務回転期間を延長する方法

  • 取引先との信頼関係を築く
  • 支払い条件の交渉を行う
  • 支払い管理を徹底する

 

ワーキングキャピタルサイクルと似た概念に、キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)があります。

キャッシュコンバージョンサイクルとは、現金が投入されてから再び現金化されるまでの期間のことで、ワーキングキャピタルサイクルと同じく以下の式で表されます。

キャッシュコンバージョンサイクル=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間

キャッシュコンバージョンサイクルも、ワーキングキャピタルサイクルと同様に、資金効率を見るための指標です。

キャッシュコンバージョンサイクルが短いほど、現金が効率的に運用されていることを意味します。

逆に、キャッシュコンバージョンサイクルが長いほど、現金が不足する可能性があります。

ワーキングキャピタルサイクルとキャッシュコンバージョンサイクルの違いは、前者は原材料や商品の仕入れから売上金の回収までの期間を見るのに対し、後者は現金が投入されてから再び現金化されるまでの期間を見るという点です。

つまり、前者は仕入れ時点から計算し、後者は支払い時点から計算するということです。

ワーキングキャピタルサイクルとキャッシュコンバージョンサイクルは、どちらも資金繰りやキャッシュフローの改善に役立つ指標です。

企業は、これらの指標を分析し、自社の事業特性や業界動向に応じて最適なワーキングキャピタル管理を行う必要があります。

 

第3章 ワーキングキャピタルの事例

第3章 ワーキングキャピタルの事例前章では、ワーキングキャピタルの分析と改善について説明しました。

ワーキングキャピタルは、売上債権、棚卸資産、仕入債務の3要素に着目して管理することで、資金繰りやキャッシュフローを改善できることをお伝えしました。

この章では、実際にワーキングキャピタルの改善に取り組んだ企業の事例を紹介します。

ワーキングキャピタルの改善は、単に資金調達の手段としてだけでなく、事業戦略や競争力の向上にも貢献することが分かります。

 

ワーキングキャピタルの改善事例(1):アマゾン

アマゾンは、世界最大のオンライン小売業者です。

アマゾンは、ワーキングキャピタルの管理においても優れたパフォーマンスを示しています。

アマゾンは、以下のような方法でワーキングキャピタルを改善しています。

  • 売上債権を減らす:アマゾンは、ほとんどの取引でクレジットカードやデビットカードなどの即時決済を採用しています。これにより、売掛金や受取手形が発生せず、売上債権がほとんどありません。
  • 棚卸資産を減らす:アマゾンは、自社で在庫を持たずにサードパーティから直接発送する「ドロップシッピング」や、サードパーティが自社の倉庫に在庫を預けて販売する「フルフィルメント・バイ・アマゾン」などのサービスを提供しています。これにより、自社の在庫を最小限に抑えることができます。
  • 仕入債務を増やす:アマゾンは、取引先との支払条件を長期化することで、仕入債務を増やしています。例えば、2019年末時点でのアマゾンの買掛金支払期間は約77日でした。

これらの結果、アマゾンは2019年末時点でのワーキングキャピタル比率が-0.4となっており、つまり流動負債が流動資産を上回っている状態です。

これは、アマゾンが自社の事業活動に必要な資金を自ら調達できるだけでなく、余剰資金を他の投資や成長戦略に活用できることを意味します。

 

ワーキングキャピタルの改善事例(2):トヨタ

トヨタは、世界最大の自動車メーカーです。トヨタは、ワーキングキャピタルの管理においても革新的な取り組みを行っています。

トヨタは、以下のような方法でワーキングキャピタルを改善しています。

  • 売上債権を減らす:トヨタは、自社の金融部門であるトヨタファイナンシャルサービスを通じて、顧客に対して自動車ローンやリースなどの金融サービスを提供しています。これにより、顧客からの代金回収を早めるとともに、金融収益も得ることができます。
  • 棚卸資産を減らす:トヨタは、在庫管理の改善においても有名です。トヨタは、需要に応じて生産量や品質を調整する「カンバン方式」や、原材料や部品の納入から完成品の出荷までの時間を短縮する「ジャストインタイム方式」などの手法を開発しました。これにより、在庫コストや廃棄コストを削減することができます。
  • 仕入債務を増やす:トヨタは、取引先との協力関係を強化することで、仕入債務を増やしています。例えば、トヨタは、自社の生産計画や需要予測などの情報を取引先と共有し、納期や価格などの交渉を円滑に行っています。また、取引先に対して技術支援や品質向上などの支援も行っています。

これらの結果、トヨタは2019年末時点でのワーキングキャピタル比率が0.9となっており、つまり流動資産と流動負債がほぼ同じ水準です。これは、トヨタが自社の事業活動に必要な資金を効率的に調達できることを意味します。

 

ワーキングキャピタルの改善事例(3):ユニクロ

ユニクロは、日本最大のアパレルメーカーです。

ユニクロは、ワーキングキャピタルの管理においても効果的な取り組みを行っています。

ユニクロは、以下のような方法でワーキングキャピタルを改善しています。

  • 売上債権を減らす:ユニクロは、ほとんどの取引で現金や電子マネーなどの即時決済を採用しています。これにより、売掛金や受取手形が発生せず、売上債権がほとんどありません。
  • 棚卸資産を減らす:ユニクロは、在庫管理の改善においても注目されています。ユニクロは、需要予測や販売動向などのデータをリアルタイムに分析し、生産計画や在庫調整を行っています。また、商品のライフサイクルを長くすることで、在庫の陳腐化や廃棄を防いでいます。
  • 仕入債務を増やす:ユニクロは、取引先との協力関係を強化することで、仕入債務を増やしています。例えば、ユニクロは、自社の生産計画や需要予測などの情報を取引先と共有し、納期や価格などの交渉を円滑に行っています。また、取引先に対して技術支援や品質向上などの支援も行っています。

これらの結果、ユニクロは2019年末時点でのワーキングキャピタル比率が0.8となっており、つまり流動資産が流動負債をわずかに上回っている状態です。

これは、ユニクロが自社の事業活動に必要な資金を効率的に調達できることを意味します。

 

第4章 ワーキングキャピタルの成功事例

第4章 ワーキングキャピタルの成功事例ワーキングキャピタルとは、企業が日常的に行う営業活動に必要な資金のことです。

ワーキングキャピタルは、売掛金や在庫などの流動資産から買掛金や借入金などの流動負債を差し引いたもので計算されます。

ワーキングキャピタルが多いほど、企業は自由に使える資金が多くなりますが、一方で過剰な在庫や売掛金が増えると資金繰りが悪化したり、利益率が低下したりするリスクもあります。

そのため、ワーキングキャピタルを適正な水準に保つことが重要です。

ワーキングキャピタルを改善する方法としては、主に売掛金回収サイトの短縮、在庫管理の改善、買掛金支払サイトの延長があります。

売掛金回収サイトとは、商品やサービスを販売した後に代金が支払われるまでの期間のことで、この期間が短いほど資金回転率が高まります。

在庫管理とは、必要なときに必要な数の在庫を供給できるよう管理することで、在庫量を適正化しコストを削減します。

買掛金支払サイトとは、仕入れた商品やサービスの代金を支払うまでの期間のことで、この期間が長いほど資金繰りに余裕ができます。

この章では、これらの方法を実践してワーキングキャピタルを改善した成功事例を3つ紹介します。

 

売掛金回収サイトを短縮した製造業

売掛金回収サイトを短縮する方法としては、以下のようなものがあります 。

  • 売掛金の支払い条件を厳しくする
  • クレジットカードや電子マネーなどの即時決済を促進する
  • 売掛金の回収管理を徹底する
  • ファクタリングなどの資金調達サービスを利用する

売掛金回収サイトを短縮した製造業の事例としては、次のようなものがあります。

 

住友化学株式会社

  • ポリオレフィン事業部が取り扱う製品について、取引条件の一つである売掛金回収サイトに関し、現行比で30日以上短縮すべく、需要家との交渉に入った。
  • これにより、年間約300億円のキャッシュフロー改善効果を見込んだ。
  • また、売掛金回収サイトの短縮に伴い、在庫管理や生産計画も見直し、効率化を図った。

 

株式会社ユニチカ

  • 繊維事業において、売掛金回収サイトを平均で約10日間短縮した。
  • これにより、年間約20億円のキャッシュフロー改善効果を得た。
  • 売掛金回収サイトの短縮は、取引先との信頼関係や競争力の向上にも寄与した。

 

在庫管理を改善した小売業

在庫管理を改善する方法としては、以下のようなものがあります 。

  • 在庫管理システムを導入する
  • 適正在庫数を知る
  • 誰でも在庫管理ができる状態にする

在庫管理を改善した小売業の事例としては、次のようなものがあります。

 

ユニクロ

  • 在庫管理システムを導入し、全店舗と物流センターの在庫情報をリアルタイムで共有した。
  • これにより、在庫過剰や欠品を防ぎ、売上機会の損失を減らした。
  • また、在庫管理システムから得られるデータを分析し、需要予測や仕入れ計画に活用した。

 

 株式会社コメ兵

  • 在庫管理システムを導入し、バーコードやQRコードで在庫の入出庫や移動を管理した。
  • これにより、在庫の正確性や可視性が向上し、作業効率が高まった。
  • また、在庫管理システムから得られるデータを分析し、販売価格や買取価格に反映させた。

 

買掛金支払サイトを延長したサービス業

買掛金支払サイトを延長する方法としては、以下のようなものがあります 。

  • 取引先との信頼関係を築く
  • 支払い条件の見直しや交渉を行う
  • クレジットカードや電子マネーなどの決済手段を利用する

買掛金支払サイトを延長したサービス業の事例としては、次のようなものがあります。

 

株式会社ベネッセコーポレーション

  • 教育事業において、教材や教具などの仕入れ先と支払い条件の見直しや交渉を行った。
  • これにより、買掛金支払サイトを平均で約20日間延長した。
  • 買掛金支払サイトの延長は、資金繰りに余裕ができるだけでなく、取引先とのパートナーシップも強化した。

 

株式会社リクルートライフスタイル

  • 飲食店向け予約サービス「ホットペッパーグルメ」において、クレジットカードや電子マネーなどの決済手段を導入し、買掛金支払サイトを延長した。
  • これにより、飲食店の資金繰りに余裕ができ、売上向上やコスト削減にも貢献した。
  • また、決済手段の多様化は、顧客の利便性や満足度も高めた。

 

株式会社ハウステンボス

  • テーマパーク内の施設やサービスの仕入れ先と支払い条件の見直しや交渉を行った。
  • これにより、買掛金支払サイトを平均で約40日間延長した。
  • 買掛金支払サイトの延長は、資金繰りに余裕ができるだけでなく、取引先との信頼関係も強化した。

 

第5章 ワーキングキャピタルの失敗事例

第5章 ワーキングキャピタルの失敗事例ワーキングキャピタルとは、企業が日常的な営業活動に必要な資金のことで、流動資産から流動負債を引いたものです。

ワーキングキャピタルが不足すると、資金繰りに支障が出たり、成長機会を逃したりするリスクがあります。

逆に、ワーキングキャピタルが過剰になると、資金効率が悪くなったり、無駄なコストが発生したりするリスクがあります。

ワーキングキャピタルの失敗事例として、以下のようなものが考えられます。

 

事例:売掛金回収が滞った建設業

建設業は、工事の完成後に請負代金を請求することが多く、売掛金の回収期間が長くなりやすい業種です。

売掛金は企業の資産であり、回収できれば現金化できるものですが、回収できない場合は不良債権となってしまいます。

不良債権は企業の利益を圧迫し、ワーキングキャピタルを減らす要因となります。

また、売掛金の回収が遅れると、現金流量が減少し、資金繰りに困難が生じる可能性もあります。

建設業における売掛金回収の失敗事例としては、以下のようなものがあります。

  • 元請け会社から支払いを受けられずに倒産した下請け会社
  • 支払い能力の低い取引先に対して大規模な工事を請け負った会社
  • 契約書や請求書の管理が不十分で回収不能となった会社

建設業で売掛金回収を成功させるためには、以下のような対策を行うことが重要です。

  • 取引先の信用調査や契約内容の確認を徹底する
  • 分割払いや前払いなどの支払い条件を交渉する
  • 売掛債権をファクタリングや譲渡する
  • 法的手段や弁護士への依頼も検討する

 

事例(1):在庫が過剰になった食品業

食品業は、消費者のニーズや流行に応じて商品開発や販売戦略を変える必要がある業種です。

また、食品は賞味期限や保存方法によって品質や価値が変わるため、在庫管理にも注意が必要です。

在庫が過剰になると、商品の鮮度や品質が低下し、販売機会や顧客満足度を失うリスクがあります。

また、在庫を保管するためのコストや在庫の廃棄による損失も発生し、ワーキングキャピタルを減らす要因となります。

食品業における在庫過剰の失敗事例としては、以下のようなものがあります。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響で需要が減少し、牛乳や乳製品の在庫が大量に余った会社
  • 季節商品を過剰に仕入れてしまい、シーズンが終わっても売れ残った会社
  • 賞味期限が切れてしまい、販売できなくなった食品を廃棄せざるを得なかった会社

食品業で在庫過剰を回避するためには、以下のような対策を行うことが重要です。

  • 需要予測や在庫管理システムの導入や改善をする
  • 日替わりメニューやサービス品などで余剰在庫を消化する
  • セールや買い取り業者への販売などで在庫処分をする

 

事例(2):買掛金支払が早すぎた卸売業

卸売業は、仕入れ先から商品を購入し、小売店や消費者に販売する業種です。

卸売業は、仕入れ先から商品を購入する際に発生する「買掛金」と、小売店や消費者に商品を販売する際に発生する「売掛金」のバランスをとることが重要です。

買掛金支払が早すぎると、現金流量が減少し、資金繰りに困難が生じる可能性があります。

また、買掛金支払が早すぎると、仕入れ先との交渉力が低下し、割引やサービスなどの優遇条件を得られなくなるリスクもあります。

卸売業における買掛金支払が早すぎた失敗事例としては、以下のようなものがあります。

  • 売掛金回収が遅れているにもかかわらず、買掛金支払を早めて現金不足に陥った会社
  • 買掛金支払を早めて信用を得ようとしたが、仕入れ先から特別な条件を受けられなかった会社
  • 買掛金支払を早めて利息を節約しようとしたが、その分の現金で有利な投資機会を逃した会社

卸売業で買掛金支払の最適化を図るためには、以下のような対策を行うことが重要です。

  • 売掛金回収期間と買掛金支払期間のバランスを考慮する
  • 仕入れ先との信頼関係や交渉力を高める
  • 買掛金支払のタイミングや方法を柔軟に変える
  • 買掛金支払の代わりにクレジットカードや電子決済などを利用する

以上が、第5章 ワーキングキャピタルの失敗事例の一部です。

ワーキングキャピタルは、企業の経営にとって重要な要素です。

ワーキングキャピタルの管理には、売掛金、在庫、買掛金などの流動資産や流動負債のバランスを適切にとることが必要です。

ワーキングキャピタルの失敗事例から学ぶことで、ワーキングキャピタルの成功事例に近づくことができるでしょう。

 

第6章 ワーキングキャピタルのまとめと今後の展望

第6章 ワーキングキャピタルのまとめと今後の展望ここでは、ワーキングキャピタルとは何か、なぜ重要なのか、どのように管理すべきか、どのような失敗事例があるか、などについて解説してきました。

ワーキングキャピタルは、企業が日常的な営業活動に必要な資金であり、流動資産から流動負債を引いたものです。

ワーキングキャピタルが不足すると、資金繰りに支障が出たり、成長機会を逃したりするリスクがあります。

逆に、ワーキングキャピタルが過剰になると、資金効率が悪くなったり、無駄なコストが発生したりするリスクがあります。

したがって、ワーキングキャピタルは適切な水準に保つことが重要です。

 

ワーキングキャピタル管理のポイント

ワーキングキャピタル管理とは、ワーキングキャピタルの水準を最適化し、資金繰りを改善し、企業価値を高めることを目的とした経営活動です。

ワーキングキャピタル管理には以下のようなポイントがあります。

  • 売掛金回収期間を短縮する
  • 棚卸資産(在庫)を圧縮する
  • 仕入債務支払期間を延長する

これらのポイントは、ワーキングキャピタルの計算式からもわかるように、ワーキングキャピタルを減らすことにつながります。

ワーキングキャピタルを減らすことで、現金流量を増やし、資金繰りを改善し、借入金や利息負担を減らすことができます。

また、ワーキングキャピタルを減らすことは、企業価値評価の方法であるディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)においてもプラスに働きます。

DCF法では、企業が将来生み出すと予測されるフリーキャッシュフロー(FCF)を割引率で割り引いて企業価値を算出します。

FCFは簡便的に(税引後営業利益+減価償却費±運転資本増減額)-投資額と計算されることがあります。

この場合、運転資本の増減はFCFに影響を与えるため、運転資本を減らすことでFCFを増やし、企業価値を高めることができます。

 

ワーキングキャピタル管理における課題と対策

ワーキングキャピタル管理は重要ですが、実践するにはさまざまな課題があります。

以下に、ワーキングキャピタル管理における主な課題と対策を示します。

 

売掛金回収期間の短縮

  • 課題:売掛金回収期間を短縮すると、取引先との関係や競争力に悪影響を及ぼす可能性がある。
  • 対策:取引先の信用調査や契約内容の確認を徹底する。分割払いや前払いなどの支払い条件を交渉する。売掛債権をファクタリングや譲渡する。法的手段や弁護士への依頼も検討する。

 

棚卸資産(在庫)の圧縮

  • 課題:棚卸資産(在庫)を圧縮すると、需要変動や納期遅延に対応できなくなる可能性がある。
  • 対策:需要予測や在庫管理システムの導入や改善をする。日替わりメニューやサービス品などで余剰在庫を消化する。セールや買い取り業者への販売などで在庫処分をする。

 

仕入債務支払期間の延長

  • 課題:仕入債務支払期間を延長すると、仕入れ先との関係や信用力に悪影響を及ぼす可能性がある。
  • 対策:仕入れ先との信頼関係や交渉力を高める。買掛金支払のタイミングや方法を柔軟に変える。買掛金支払の代わりにクレジットカードや電子決済などを利用する。

 

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ワーキングキャピタル管理における最新動向と将来性

ワーキングキャピタル管理は、企業の経営効率や競争力を高めるために、常に改善や革新が求められる分野です。

近年では、以下のような最新動向や将来性が見られます。

 

デジタル化と自動化

ワーキングキャピタル管理においては、データの収集や分析、決済や融資などのプロセスをデジタル化や自動化することで、効率化や最適化を図ることができます。

例えば、クラウドベースのソフトウェアやAI(人工知能)を活用して、売掛金回収や在庫管理などの業務を自動化したり、リアルタイムでワーキングキャピタルの状況を把握したりすることが可能です。

また、電子決済やブロックチェーンなどの技術を利用して、決済や融資のスピードやセキュリティを向上させたり、コストやリスクを削減したりすることもできます。

 

サプライチェーン・ファイナンス

サプライチェーン・ファイナンスとは、仕入れ先や販売先などのサプライチェーンの関係者が連携して、ワーキングキャピタルの最適化や資金調達を行う仕組みです。

例えば、販売先が仕入れ先に対して支払いを早めることで、仕入れ先のワーキングキャピタルを改善し、販売先は割引やサービスなどの優遇条件を受けることができます。

また、販売先の信用力を利用して、仕入れ先が銀行やファクタリング会社などから低金利で資金調達することもできます。

サプライチェーン・ファイナンスは、サプライチェーン全体の資金効率や競争力を高めるとともに、取引関係の強化やリスクの分散にも寄与します。

 

サステナブル・ファイナンス

サステナブル・ファイナンスとは、環境や社会などの持続可能性に配慮した資金調達や投資のことです。

ワーキングキャピタル管理においては、環境や社会への貢献度に応じて、金利や手数料などの条件が変動する仕組みが注目されています。

例えば、グリーン・ファクタリングと呼ばれるサービスでは、売掛債権を譲渡する際に、環境に優しい製品やサービスを提供する企業に対して、手数料を割引することで、ワーキングキャピタルの改善と環境保護の両立を支援しています。

ファイナンスは、ワーキングキャピタル管理のコスト削減や収益向上に加えて、企業の社会的責任やブランドイメージの向上にも貢献します。

ここまでが、第6章 ワーキングキャピタルのまとめと今後の展望です。

ワーキングキャピタル管理は、企業の経営にとって重要な要素です。

ワーキングキャピタル管理には、売掛金回収期間の短縮、棚卸資産(在庫)の圧縮、仕入債務支払期間の延長などのポイントがあります。

ワーキングキャピタル管理においては、デジタル化や自動化、サプライチェーン・ファイナンス、サステナブル・ファイナンスなどの最新動向や将来性が見られます。

ワーキングキャピタル管理を適切に行うことで、資金繰りを改善し、企業価値を高めることができるでしょう。

 

ワーキングキャピタル関連書籍一覧

 

ワーキングキャピタル関連サイト一覧

 

ワーキングキャピタルの基礎から応用まで/成功事例と失敗事例から学ぶ資金管理のコツのまとめ

ここでは、ワーキングキャピタルとは何か、なぜ重要なのか、どのように管理すべきか、などについて解説しました。

ワーキングキャピタルは、企業が日常的な営業活動に必要な資金であり、適切な水準に保つことが重要です。

ワーキングキャピタル管理とは、ワーキングキャピタルの水準を最適化し、資金繰りを改善し、企業価値を高めることを目的とした経営活動です。

ワーキングキャピタル管理には、売掛金回収期間の短縮、棚卸資産(在庫)の圧縮、仕入債務支払期間の延長などのポイントがあります。

ワーキングキャピタル管理は重要ですが、実践するにはさまざまな課題や最新動向に対応する必要があります。

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