[最終更新日]2021/09/13
社会人になってから上司や先輩から「ゲーム理論/囚人のジレンマも知らないのか?!」なんて言われた事がある人も多いはずです。
また、ビジネスの交渉ごとを任された場合に「ゲーム理論/囚人のジレンマ」を知っておいて損はありません。
そんな社会人になってから知っておいて方が良かったと思われる「ゲーム理論/囚人のジレンマの問題で仕事・ビジネスに戦略的思考を活かす」を初心者向けにわかりやすく説明いたします。
Contents
ゲーム理論(game theory)の一つ「囚人のジレンマ」
「囚人のジレンマ」とはゲーム理論(game theory)の中の一つです。
ゲーム理論(game theory)とは、一般的なテレビゲームなどの中で利用されている理論という訳ではありません。
ゲーム理論とは複数の主体が影響し合いながら意思決定の在り方をゲームに見立て研修を行ったミクロ経済学の一分野です。
なぜ、ミクロ経済学の分野なのに「ゲーム」と名付けられたのでしょうか?
それは、将棋や囲碁、チェスなど相手の意思決定で自らの意思決定が影響する状況に似ていることから”ゲーム理論”と名付けられました。
相手の意思決定が自分の意思決定に影響し、自分の意思決定が相手の意思決定に影響を与えます。両者が互いに影響をし合うそんな所が「ゲーム」と同じに見えたのです。
ゲームには駆け引きがあって当然です。
それは、企業経営や商品の販売戦略など様々な状況と同じであり、現代では経済学の中心的役割を担っています。
また、ゲーム理論の対象は経済学だけはなくコンピューター科学、生物学、社会学、心理学、政治学、法学、人類学、工学等の様々な学問分野でも応用されています。
なお、ゲーム理論のエンジニアや研究者をゲーム理論家と呼ばれています。
ゲーム理論のはじまり
ゲーム理論は、アメリカの数学者ジョン・フォン・ノイマン/John von Neumann(1903年12月28日〜1957年2月8日)とアメリカの経済学者オスカー・モルゲンシュテルン/Oskar Morgenstern(1902年1月24日〜1977年7月26日)の共著書『ゲームの理論と経済行動』(1944年) によって誕生しました。
ジョン・フォン・ノイマンは、原子爆弾やコンピューターの開発へ関与していることでも知られています。
また、20世紀科学史における最重要人物の一人ともされていて、工学・数学・心理学・物理学・計算機科学・経済学・気象学・政治学にも影響を与えました。
オスカー・モルゲンシュテルンは、ゲーム理論を持ち込んだ経済学の世界で現在のミクロ経済学の基礎を作り上げました。
ゲーム理論は、主流派の経済学を批判する目的で生まれた理論でしたが、現代では経済学の中でも中心的な役割を担っています。
囚人のジレンマについて
囚人のジレンマは、二人の犯罪容疑者AとBが登場します。
AとBは意思疎通の取ることが出来ない別々の部屋で取調べを受けています。
AとBは共に犯罪を犯していますが、確実は証拠を警察に知られていません。AとBは「自白」か「黙秘」を選択することが可能ですが、ある取引を持ちかけられました。
- 普通では二人とも懲役10年。だけど、証拠は揃っていないのでふたりとも黙秘なら5年に減刑される
- どちらかだけが「自白」すれば、自白した方は無罪、相手は懲役20年
- どちらもが「自白」したら懲役10年
AとBの行動と懲役年を表にまとめると次のようになります。
B黙秘 | B自白 | |
A黙秘 | A5年 B5年 |
A20年 B無罪 |
A自白 | A無罪 B20年 |
A10年 B10年 |
この文章を読み冷静に考えた場合、ABにとって一番メリットがある選択は、AB共に「黙秘」するということは明白です。
ただし、お互いが自分の利益のみを追求した場合に、「お互いに黙秘」よりも「お互いが自白」という結果になってしまいます。これこそが囚人のジレンマです。
このジレンマは以下の理由で起こります。
Aの立場で考えた場合
- Bが「黙秘」を選択した場合、Aは黙秘すれば懲役5年、Aが自白すれば無罪です。つまり、自白を選んで無罪になる方が得です。
- Bが「自白」を選択した場合、Aは黙秘すれば懲役20年、Aが自白すれば10年です。つまり、自白を選んで懲役10年になる方が得です。
もちろん、Bであっても同じです。
つまり、AとB共に相手の行動がいずれであっても「自白」することが最適な選択となりました。
合理的な選択肢としての自白
ここで重要なことは、AB共に「相手が自白したらどうしよう?」という疑いの気持ちや恐怖などで「自白」を選択する訳ではなく、合理的な選択として「自白」するということです。
冷静に考えた場合には「黙秘」が一番メリットがある選択だったにも関わらず、合理的な判断としては「自白」になってしまうのです。
囚人のジレンマは社会の多くで存在している
囚人のジレンマは、上記で例に上げた犯罪行為という一般社会からかけ離れたところでばかり起こっている訳ではありません。
一般社会でも起こっています。例えば、値下げ競争です。
近隣の店舗間で値下げ競争が多いガソリンスタンドや、少し前に起こっていた牛丼チェーンの値下げ競争などです。
他にも、環境問題、公共財の供給、自由貿易のための国際協力、核軍縮のための国際協力、共有資源の管理など、現実社会における多くの事象でも囚人のジレンマを使って説明することができます。
また、現在の携帯電話の値下げ競争も囚人のジレンマで説明することが可能です。
どの会社も値下げをすれば収益が悪化することがわかっているにも関わらず、値下げという選択肢を選んでいます。もちろん、総務省からの圧力など様々な条件が偶然一致したという理由もありますが囚人のジレンマでも説明可能なのです。
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囚人のジレンマを回避させる
ここからは囚人のジレンマを回避させる方法を具体的に説明いたします。
相手との信頼関係を強固にする
相手との信頼関係が強固であれば問題はありません。信頼関係があれば「相手を疑うこと」「相手から疑われること」はありえません。
上記の例で言えば「取り調べの際に取引を持ちかけられても黙秘する」と契約していればジレンマに陥ることはありません。ただ、相手との関係性上「黙秘する」という契約だけでは信用出来ない場合には罰則を設ける契約なども効果的です。
これは、近隣店舗間での値下げ競争などに応用可能です。「商品を●円以下に値下げして販売した場合には罰則として●円を支払う」などです。このような契約をすれば資本の勝負となる値下げ競争をなくし両社共に利益を得ることが可能です。注)法律的な問題は考慮していませんのでご注意ください。
また、「就活ルールの制定」も囚人のジレンマによるものです。
企業としては優秀な人材をより多く採用したいが為に、早期に内定通知をだすが退職率が高い。学生としてはより良い企業に採用してい欲しいが為に、就活がじっくりと出来ず適職がわからない。このような事情で一定の「就活ルールが制定」されたのです。ただ、就活ルールの制定は毎年変更されるなど状況の改善には至っていません。
つまり、「契約」だけはなく「罰則事項」を設けることの2つが重要なのです。
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囚人のジレンマに原因となる戦略を選ばない
囚人のジレンマを知ったあなたは、そもそも囚人のジレンマに陥るような戦略を選ばなければ良いのです。
「当たり前なことをわざわざ言うな!」とお叱りを受けるかもしれませんが、これがわかっているけどわかっていない最も最適な戦略です。
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ゲーム理論/囚人のジレンマの関連サイト
- ゲーム理論/Wikipedia
- ゲーム理論はどのようにマーケティングで活かされる?/DIGIMAGUILD
- 仕事で使える戦略思考最強の武器「ゲーム理論」は何が凄いのか/週刊ダイヤモンド
- 囚人のジレンマとは?/ferret
- 囚人のジレンマ/グロービズ経営大学院
- 囚人のジレンマの解決法/経営を学ぶ~経営学・MBA・起業
- 囚人のジレンマで搾取が発生する仕組みを解明/東京大学
- 囚人のジレンマ(しゅうじんのじれんま)/野村證券
ゲーム理論/囚人のジレンマの問題で仕事・ビジネスに戦略的思考を活かす:初心者向けのまとめ
このように囚人のジレンマに陥ってしまうと抜け出すことは難しいのが実情です。
そのために、もし囚人のジレンマに陥らないようにするほうが良いのは当然です。
つまり、ビジネスにおいては短期で考えるのではなく長期的な目線で考えていれば囚人のジレンマに陥らずに済むことが考えられます。
「今」だけに焦点を当てたビジネスではなく、トータルでの利益を求めた将来を考えたビジネス展開を考えてみてはいかがでしょうか?