[最終更新日]2022/06/14
インターネットの進化で無料(free)で利用できるサービスは著しく増加しています。
しかし、無料のサービスを提供している企業はなぜ無料サービスを提供しているのでしょうか?また、サービス提供に関する費用、コストはどのようにして捻出しているのでしょうか?
「もしかして、CSR(Corporate Social Responsibility)活動と言われている社会的責任の為?」
なんて思っている方も多いはずです。
そんな方の為に、無料でサービス提供をする「フリーミアムビジネスモデル」をわかりやすく説明いたします。
Contents
フリーミアム(freemium)ビジネスモデルの提唱者/単語の意味は?
フリーミアムビジネスモデルの提唱者は、アメリカ合衆国のニューヨーク市に本拠を置くUnion Square Venturesの共同創設者であるフレッドウィルソン(1961年8月20日~)です。
2006年3月23日にビジネスモデルとして明確に示されました。オンラインサービスの普及により多くの商品サービスで利用されることが多くなりました。
フリーミアム(freemium)という用語、英単語はありません。
フリーミアム(freemium)は造語で、無料(free)と割増(premium)を掛け合わせています。
この用語をアメリカ合衆国で1993年に創刊された雑誌「Wired」誌の編集長クリス・アンダーソンらによって紹介され、2009年7月に「FREE <無料>からお金を生みだす新戦略」として出版されベストセラーとなりました。
フリーミアム(freemium)とは?
フリーミアムとは、サービスの売り手買い手のいずれかまたは利用者の一部が費用を負担する収益モデルのことを言います。
基本的なサービスを無料で提供して、基本的なサービスよりもさらに高度な機能やサービスは有償で提供します。
20世紀のフリーミアム/戦略モデル
スーパーや百貨店などの試食販売も一種のフリーミアムということも出来ます。
その商品を少しだけ食べるという行為は無料です。食べることで食べたいという空腹感を満たすことが出来ます。
しかし、お腹いっぱい食べたいという満足感を満たすことは出来ません。お腹いっぱい食べるという満足感は、さらに高度でそれを得るためには有償で商品を購入しなければなりません。
この満足感は他の食品でも満たすことが出来ますので、他の商品の購入でも同じだと言えます。
他にも携帯電話本体は無料で通信料は有料、コーヒーメーカー無料でコーヒーパックは有料などもフリーミアムということが出来ます。
このように実社会においてもフリーミアムの考え方は、20世紀から多く存在していました。
しかし、このやり方は現在の携帯各社の販売方法が問題になっているように、消費者も無料より高いものはなく、結局は私からお金を払わせるのだろうと思っていました。
21世紀のフリーミアム/戦略モデル
20世紀と21世紀のフリーミアムの戦略モデルは全く違ってきます。
この為、20世紀モデルのフリーミアムはフリーミアムとは違うと説明する場合もあります。
20世紀のフリーミアムの場合はモノが存在していますので、コストをゼロにすることは出来ませんでした。
試食販売の食品のコストはわずかですのであまり気にならず誤差の範囲内と処理できる場合もありますが、携帯電話やコーヒーメーカーなどのモノはどうしてもコストが多くかかっています。
つまり、20世紀のフリーミアムではそのコストを回収する必要があったのです。
しかし、21世紀のフリーミアムはデジタル化が進んだ結果、一部の利用者だけが有料で使ってくれていれば、その他の利用者は、ずっと本当に「無料」で問題ないというモデルが生まれたのです。
商品の複製はコストがかかりますが、データの複製はコストがゼロと言っても過言ではありません。
もちろん、サーバー利用料などで一定のコストは発生していますが、ムーアの法則などでわかるようにコストは間違いなくゼロに近づいており、21世紀のフリーミアムが本当に「無料」で利用できるのです。
内部相互扶助/4つの無料戦略に分類
上記のように20世紀のフリーミアムと21世紀のフリーミアムは違うのと同様、様々な形の「無料」があります。
そんな無料には4つの種類があります。
今の時代にはあらゆるところに「無料」が存在しているので、具体例を交えて説明いたします。
直接的内部相互補助/20世紀のフリーミアム
無料の恩恵を受けている利用者が他の有料なモノへお金を支払うことで、直接的に「無料」のコストを回収します。
これは20世紀のフリーミアム/戦略モデルの項目で説明した無料戦略です。
他にも、ピザを一枚買ったらもう一枚は無料などという戦略も同様です。
三者間市場
第3者がモノやサービスに関するコストを提供してくれるので利用者は無料で利用可能です。
フリーペーパーと呼ばれる求人雑誌などが代表例です。テレビ番組やラジオ番組も同じです。最近ではマッチングビジネスも同様です。
フリーミアム/21世紀のフリーミアム
基本的なサービスを無料で提供して、基本的なサービスよりもさらに高度な機能やサービスは有償で提供します。
このページで説明している無料戦略です。
機能を追加したり、高機能なサービスなどを有料で提供するビジネスモデルです。Skype、Googleドライブなどが代表例です。
非貨幣市場
金銭の取引以外のモノを言います。不正なコピーなども非貨幣市場であり代表例です。また、amazonのレビューやクックパッドなどへの投稿も同様です。
金銭の取引から外れており、社会貢献や世間からの注目、評判を得るために行われている価値提供をいいます。
SNSのいいねなど、承認欲求を満たせるという心理的な報酬だということが出来ます。
フリーミアムのモデル導入で成功する3種類の制限
フリーミアムモデルを導入して成功させるためには、サービスに何らかの制限を設ける必要があります。
その方法は大きく3種類に分類することが出来ます。
この制限は、利用者に少ないストレスを与える事により有料になっても使用したいと思わせるために設定します。
更に多くの利用者を有料サービスへ導くためにはいくつかの制限を複合的に設けることが効果的です。
ただし、いくつもの制限を設ける事はサービス低下に繋がりかねません。
利用者がもっと便利になるのなら有料でも価値があるなと感じるバランスを考えて判断する必要があります。この判断をする為に、普段から利用者のニーズを知り、サービスの価値をしっかりと理解しておく必要があります。
機能の制限
スマホゲームやオンラインゲームで利用されているレアアイテムの有料オプションが代表例です。
追加機能の実装や既存の機能の強化などが出来ないなどです。
利用上限
Googleドライブなど”容量の制限”が代表例です。
上限以上の使用したい利用者を有料へと導きます。
また、スマホで撮影した画像の保存など、一定の期間使用し続ければ、自然と容量が上限に達することもありますので有料化へ導くには時間がかかることもあります。
サポートの制限
使用方法がわからない場合の問い合わせが出来る回数の制限やリソース内容の差別化などがプランで違っているのが代表例です。
具体的なフリーミアム例
フリーミアムはどのような企業がどのようなサービスを展開しているのでしょうか?
自分もフリーミアムなサービスを利用しているのでしょうか?
身近なサービスで見ていきましょう。
cookpad(クックパッド)
cookpad(クックパッド)は料理レシピのコミュニティwebサイトです。
自作の料理レシピを掲載できるだけではなく、他会員が考案したレシピを実用した料理を写真付きでも公開することが出来ます。
有料のプレミアム会員は検索機能に大幅なグレードアップがあります。
他にも便利な機能が利用可能で人気順の表示やアクセス数ランキングなどが利用できない為、無料会員では検索に時間がかかることも多く時間節約のために有料会員になる利用者はいます。
Skype(スカイプ)
Skypeはマイクロソフトが提供しているコミュニケーションツールです。
Skype ユーザー間では、1対1またはグループでの無料音声通話やHDビデオ通話が可能です。グループ通話機能は最大50人まで同時に参加可能などビジネスツールとして利用されている利用者も多くいます。
国内の固定電話や携帯電話への通話や国際電話は有料サービスとして提供しています。
また、その通話料金は低額で一定の料金を支払えば無制限通話が可能な地域もあります。
アメリカへの無制限通話は月額350円と一般的な国際電話に比べても圧倒的です。
食べログ
食べログはカカクコムが提供している、口コミやランキングで飲食店を探すことができるコミュニティウェブサイトです。会員登録も必要なく利用可能です。
ランキングを検索したいや割引価格が高いクーポン券を利用したいなどの利用者は有料となります。
ChatWork(チャットワーク)
Chatwork(チャットワーク)はメール、電話、会議・訪問など仕事で必要なコミュニケーションをより効率的にするビジネスチャットです。
無料プランではグループチャットの登録数やストレージ容量に制限があります。
無料プランでも十分な機能が使えるのですが、有料プランが数百円のために長期利用している中で抵抗なく踏み切れるという点が特徴です。
Abema TV(アベマティービー)
Abema TVはアメーバブログで有名なサイバーエージェントとテレビ朝日が共同で運営しているパソコンやスマホで見ることができるインターネット専用TVです。
放送中の時間の閲覧は、誰でもどこでも見ることが出来ます。
有料会員は見逃した番組などもいつでもどこでも見ることが可能です。
マンガBANG!
マンガBANG!は株式会社Amaziaが運営している国内最大級の無料マンガアプリサービスです。
少年漫画、青年漫画、少女漫画など、50作品以上のさまざまな漫画を毎日8話無料を読むことが出来ます。
専用のコインの購入で自由にマンガを読むことが可能になります。
Slack(スラック)
slackは、75 万社を超える企業が利用しているチームでのコミュニケーションを重視したオンラインチャットツールです。
他社とのツールの連携なども可能です。
有料会員は、メッセージの履歴保存件数が無制限になったり、ストレージ容量の差などがあります。
PICKUPキャリコン
PICKUPキャリコン
Eight(エイト)
Eightは、Sansan株式会社が運営している名刺管理ツールです。
個人での利用から社内で利用する場合に有料となります。社内で利用すれば社内利用者すべての名刺を一括で管理することが可能です。
共有された名刺データをCSV形式でダウンロードできたりするので、年賀状やメール一括配信などにも活用することが可能です。
Dropbox(ドロップボックス)
Dropboxは、米ドロップボックス社が提供しているオンラインストレージサービスです。
無料版は個人向け、有料版は個人向けはストレージ容量の増加、ビジネス版は容量無制限となっています。
また、無料版でも新規ユーザの紹介制度で容量を増やすことが無料利用者を獲得し軌道にのりました。
キャリアコンサルタントドットネット
キャリアコンサルタントドットネットは国家資格キャリアコンサルタントと社会を繋ぐために運営している当サイトです。
有資格者であれば無料で登録することが可能です。
キャリアの悩みを抱えている相談者(クライエント)は無料相談可能です。回答を掲載した登録者には無料広告の掲載が可能となります。
有料での広告掲載が可能で、キャリアコンサルタントとしての独立・起業向けにコンサルタントを行うなどしています。
フリーミアムの注意点
上記で説明したようにフリーミアムの成功は多くありますので、新ビジネスを考えている場合には効果的かもしれません。
しかし、フリーミアムを検討する際には以下の点の注意が必要です。
注意点を理解し新ビジネスに活かしてみてはいかがでしょうか?
サービスを展開する市場
既に市場が出来ている場合には要注意ですが、市場が出来ていない場合にはフリーミアムをやる意義があります。
既に市場が出来ている場合でも、新しいサービスとの組み合わせで市場を拡大するというのも一つの手段です。
無料サービスのコスト
無料サービスのコストはモノを作るよりは少なくなっていますがゼロではありません。
また、導入後すぐに有料利用者が増加する事がないと考えた計画を立てる方がベターです。
つまり、有料利用者が一定程度までの間は無料サービスの運営にかかる資金が必要となります。
資金がゼロでは運営することは出来ないと考えた資金計画に努めましょう。
有料サービスと無料サービスのバランス
無料サービスが魅力的である必要は当然ですが、有料でも使用したいと思わせるサービスの提供も必要です。
無料と有料の境を明確にし有料サービスの優位性をはっきりさせることが重要です。
一定の無料利用者の獲得後には有料利用者へ導けるようにしましょう。
他にも、利用制限を設けている場合は期間限定で有料プランを使用可能にしたり、クーポンや1000円分利用券などの配布で有料プランを利用してもらえば有料利用者増加が可能です。
PICKUPキャリコン
「無料利用者の増加」が「有料利用者の増加」に繋がる”5%ルール”
webのフリーミアムでは5%の有料利用者がいれば成立すると言われています。これを5%ルールと言います。
その為、5%の有料利用者を増加させる為には、無料利用者を増加させる必要があります。
また、この有料利用者を増加させることが無料利用者サービス運営の資金にもなります。
フリーミアム関連サイト
- フリーミアム/Wikipedia
- フリーミアムとは?「基本無料」の収益モデル事例8選/fereet
- フリーミアムの勘所が5分でわかる!/LISKUL
- 「無料(フリーミアム)」戦略は武器になることもあれば、弱点にもなる。成功事例から学ぼう。/エムタメ!
- フリーミアム/Synergy Marketing
- フリーミアムモデル完全ガイド/Hub Spot
フリーミアムのまとめ
いかがだったでしょうか?
途中の項目でもお伝えしましたが当サイト(キャリアコンサルタントドットネット)はフリーミアムを導入しています。
そんな当サイトが導入している理由は以下の通りです。
キャリアコンサルタントの知名度向上
フリーミアムの導入で、国家資格化されて間もなく知名度が低い「キャリアコンサルタント」という資格を知ってもらえると考えました。
他にも様々なサービス展開も効果があるので一概には言えませんが、今これを読んでいただいている段階で一定の成果はあると考えています。
相談のプロへの相談文化の定着
また、プロに相談するという文化がない日本ですが、社会の変化に伴い間違いなく必要となり、そんなキャリア相談希望者を相談できる環境になり、当サイトの目的である「キャリアコンサルタントと社会を繋ぐ」を達成するために効果的と考えたからです。
キャリアコンサルタントの社会的立場の向上
同時に、有料相談の受付を行う事がもう一つの目標である「キャリアコンサルタントの社会的立場向上」に役立つとも考えました。
フリーミアムの導入が、目標の達成や社会問題の解決にも繋がります。
ESG・SDGsなど社会的問題の解決
フリーミアムの導入で、ESG(環境/Environment・社会/Social・ガバナンス/Governance)やSDGs(持続可能な開発目標)など社会問題の解決にも貢献できるのではないでしょうか?
このように、今までは行政が行っていた社会問題の解決を企業がすることが一般的となり非常に重要となりますので、企業の継続的な存続の為にもフリーミアムを導入してみてはいかがでしょうか?